卒業生に贈る絵本

 卒業生に贈ったらすてきだろうな……と思った絵本をまとめてみました。幼少時代の姿や成長を描く絵本、人生を指南する絵本、心のビタミン剤になりそうな絵本etc.を並べています。
 すべてではありませんが、◆をクリックするとレビューに飛びます。



子どもの成長をみつめる絵本

  • 女の子の成長を祝う

ちいさなあなたへ (主婦の友はじめてブックシリーズ)

  • 男の子のすがたを愛しむ

きみがいま―Little Boy

  • 子どものこれからを想う

たくさんのドア

  • 男の子の個性を四季を通して詠んだ英語俳句絵本

GUYKU: A Year of Haiku for Boys


生まれた日を想い出す絵本

  • 冬に生まれた赤ちゃんたちへ

あかちゃんがうまれたよ

  • あなたが生まれた夜に

あなたが生まれた夜に



人生のレッスン絵本

  • 出会いから学ぶ

シーソー

  • じぶんらしさ

っぽい

  • どうやって進んでいこう

きみの行く道

  • たいせつにしたい愛しいものは……

どんなときも きみを

  • はじめの一歩からはじまった

Walk On!: A Guide for Babies of All Ages

  • クッキーから学ぶ人生

Cookies: Bite-Size Life Lessons

  • 視点の異なるコミュニケーション

Duck! Rabbit!

  • これぞ人生

The OK Book



元気の出る絵本

  • 壁にぶつかったら……

Splash!: A Little Book About Bouncing Back

  • クリエイティブに乗りきろう

Beautiful Oops!

  • 夢はいつかかなうもの

Learning to Fly

Ernest, the Moose Who Doesn't Fit


先生に贈る絵本

  • ありがとうの気持ちをこめて

10本のまっかなバラ

  • 先生のおかげでじぶん発見

てん

April and Esme Tooth Fairies リアルな妖精たち

 "April and Esme Tooth Fairies"は、非常にボブ・グラハムらしい絵本だった。妖精のおとぎ話を美化せず、日本的に表現すれば「主人公を下町の人情あふれる情景とともに描く」いつもの手法が冴えていた。
 主人公は歯の妖精エイプリルとエスミの姉妹。この歯の妖精一家は高速道のかたわらに住む。排気ガスがもうもうと吹き込み、空き缶やビール瓶がごろごろ転がっているような場所で1691年以来、歯の妖精業を営んでいる。ある日、小さな姉妹たちに仕事の電話がかかってきた。初めてのお客さんはパークヴィルのコーンフラワー・フィールド3番地に住むおばあちゃん。孫息子ダニエルの乳歯が抜けたので、取りに来て欲しいとのことだった。まだ7歳のエイプリルに妖精の仕事がつとまるのか。お父さんもお母さんも半信半疑だったけれど、しんけんなエイプリルとエスミの姿に最後は折れた。みんなで夕食をすませた後、姉妹はコインをあみの袋に入れて出発した。
 星降る夜の飛行、おばあちゃん宅でのアクシデントなどなど、ささやかでドキドキの冒険が重なり、小さな姉妹の姿に胸が熱くなる。これがボブ・グラハム・マジックか。
 今まで夢の中にしか棲んでいなかった歯の妖精の存在が、ぐっと身近に感じられるようになった。
Oscar's Half Birthday オスカーは6か月 - 絵本手帖

April and Esme Tooth Fairies

April and Esme Tooth Fairies

amazon:Bob Graham

Underground: Finding the Light to Freedom こどもたちに語るどれい制度

 "Underground"は、単純明快に奴隷制度の背景を語った絵本だ。自由を求めて逃亡した人々の息づかいを、わかりやすい言葉と絵で伝える。たとえば冒頭はこんな感じ。

The darkness.

 ページをめくった次の見開きで、

The escape.

 さらにページをめくると、

We are quiet.

 と続く。つまり、一場面に一語、あるいは一文のシンプルさ。このインパクトが、子どもたちの心にぐぐっと深く届く。
 見つかれば死に至る逃亡が、どれだけ危険な行為だったか。まさに息を呑む夜半の活動が、大胆な構図で活写される。読者は劇画のように力づよい描線にも同時に引き込まれるだろう。
Black Jack: The Ballad of Jack Johnson ボクシング界のブラック・ジャック - 絵本手帖

Underground

Underground

amazon:Shane Evans
 はてな経由では現在、書籍情報が出ていまませんが、アマゾンには書影が出ています。→http://www.amazon.co.jp/Underground-Shane-Evans/dp/1596435380/ref=sr_1_3?ie=UTF8&s=english-books&qid=1298220636&sr=1-3

Crow からすくん

 真っ黒で、大きくて。たのしそうにおしゃべりすることりたちの仲間に入りたいけれど、からすくんはその身なりから恐れられている。友だちになりたいな、でも、だめみたい。真っ黒だからいけないんだ。もっとちがう姿だったらよかったのに。そうだ! 体中に色をぬればいいんだ。でも、名案と思った計画にもかかわらず、ことりたちは逃げていってしまう。うわあ〜ん。悲しくて大粒の涙をこぼしたら、色がぜんぶ流れてしまい、からすくんはもとのまま。すると……。
 なんだかゾウのエルマーに似た構想と思ったけれど、最後がまったくちがっておもしろい。からすくんはいつの日か、秘密を明かすのかな……。
 ティマーズの明るくはじけたイラストが、とりたちの会話をユーモラスに描く。アクリル画材の長所をすべて表わすイラストは、いつも魅力的。娘も「たのしい絵本!」と太鼓判を押している。
 原書は、ベルギーとオランダで出版された絵本。

Crow

Crow

amazon:Leo Timmers
 

まちのいぬといなかのかえる

 大好きなモーさん絵本の翻訳が出ました。『まちのいぬといなかのかえる (大型絵本)』は、季節のめぐりをとおして犬と蛙の交流を描くやさしくて、うつくしいストーリー。今年のコルデコット賞にオナーぐらいで入選するかなとも思った作品でした。
City Dog, Country Frog 犬と蛙、美しい四季の物語 - 絵本手帖
 コルデコット賞といえば近年、入賞作品の数が少ないのですが、個人的によい傾向だと思っています。「よい絵本」は、それほど多くありません。ましてや世代を越えて読まれ続ける絵本は、そうそう出てくるものではありません。このようにして「賞」の意味を考えると、新刊絵本を見る目も変わってきます。
2011年コルデコット賞受賞絵本 - 絵本手帖

まちのいぬといなかのかえる (大型絵本)

まちのいぬといなかのかえる (大型絵本)

Slowpoke のんびりいこうよという本

 まるで自分のことのように読んだ"Slowpoke"がおもしろかった。
 フィオーナはのんびりやさん。お風呂はゆっくり、朝の身支度にも時間をかける。歯みがきは1本につき32回のブラッシング。着替えは58回。父親の「バスが出ちゃうよ〜」のひとことも気にせず、髪を100回とかす。このあたりの数は誇張表現だとは思うけれど、一方でフィオーナの家族はなんでもはやてのようにこなす人々だ。バスに乗りおくれそうになったフィオーナにしびれを切らした母親は、彼女をスピード学校に入学させることにした。「まわりを見ずにすめばすむほど、行動ははやくなります」とたたき込まれながら、フィオーナはスピード学校で特訓を受ける……。
 絵本というよりは「スローライフ」のよさを啓蒙する小作品といった感がある。最後はもちろん、家族がゆっくり生きる良さに気づき、フィオーナも極端なのんびりを直してハッピーエンド。
 スピード学校には笑ってしまった。軽薄短小、効率主義への皮肉でもある。

Slowpoke

Slowpoke

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Counting on Snow さむい国の数の絵本

 "Counting on Snow"は、極寒の土地で暮らす動物たちの数の絵本。カリブー、野ウサギ、オオカミ、シロクマ、ムース……。ページにはたんに動物たちが現れて、その数が10からのカウント・ダウンで示されるのみだけれど、おしまいに向かうにつれて雪が舞いはじめ、最後にまっ白になる光景が単純に美しい。ぬくもりを残した素朴な絵も、大平原の自然描写に一役買っている。シンプルだけれども、いつまでも開いていたかった。
 暗い冬は苦手だったけれど、いつの間にか気にならなくなっている。この土地の、日照時間の短さになれてきた証拠かな。でなかったら、この絵本をみずから手に取ることなどなかったのじゃないか。
 カナダの絵本。

Counting on Snow

Counting on Snow

amazon:Maxwell Newhouse