2009-02-01から1ヶ月間の記事一覧

ブログをやっていて良かったこと

絵本手帖を開設した目的はただひとつ――子どもと読んだ絵本の記録、でした。でも、続けているうちに、英米の多様な子ども文化について書くことが、家族や自分を見つめる大切な日課になりつつあることが自覚でき、今は一日一冊、書くことで自己投影を確かめて…

Hurry Up and Slow Down ウサギとカメのかわいらしいお話

冬の翌日は、ふたたび春の一日でした。絵本のページをめくるように、春、冬、春の順番で絵巻を見せてもらったようで、自然の気まぐれにただただ目を瞬かせるばかり。昨日の銀世界は夢のように消え去り、さわやかな青空の下、光る風が吹き抜けていきます。 そ…

森の中へ

うす紫のクロッカスが顔をのぞかせ、光る空気はすっかり春。ここ数日、明るい風景にウキウキと胸を躍らせていましたが、今朝は突然の雪景色です。あまりの変貌ぶりに、まるでおとぎ話の世界に舞い込んだかのような錯覚を抱きました。 (夕べ、ちらほら粉雪が…

チキンスープ・ライスいり 12のつきのほん

息子の誕生月を迎え、15年の歳月に想いを馳せました。まだ少年ですが、なんとなく青年になりつつもあり、微妙な年頃です。学校の行き帰り、とぼとぼと向こうから歩いてくる姿を見て手を振ると、恥ずかしそうに振り返してくれる、その気持ちがうれしいです。…

Tsunami! ラフカディオ・ハーン原作"A Living God"から

『Tsunami! (Rise and Shine)』は、発売当初から非常に話題に上っていた絵本です。日系人作家キミコ・カジカワと実力派画家エド・ヤングが組み、ラフカディオ・ハーン原作 "A Living God"(Gleanings in Buddha-fields,1897)*1を迫真に満ちた絵本に仕立てまし…

アマゾン・キンドル2本日発売

アマゾン・キンドル2発売*1に合わせ、NYTがレビューを掲載していた。 →The Kindle: Good Before, Better Now かなりの高い評価。"I Googled him."や"She's been Photo-shopped."など、テクノロジーが動詞化現象を繰り広げる中、アマゾンは本来、動詞である"k…

くまの絵本

「クマ」はテディベアの存在もあり、絵本の中ではもっとも子どもに身近なキャラクターに感じられます。そこで、以前からずっとまとめたいと思っていた「くまの絵本」リスト。雪のちらつく15年前の夜に誕生した息子を想いながら作ってみました。◆をクリックす…

The Bill Martin Jr Big Book of Poetry ビル・マーチン Jr.(1916-2004)編纂の詩集

『The Bill Martin Jr Big Book of Poetry』*1を開き、自分もいつかこのように好きな詩歌を集めた詩集を編んでみたいなと想い描いた。このような豪華版は、ぜったいに不可能だけれど。なにせ序文がエリック・カール。以下、ラシュカやヤッカリーノ、エイラト…

Bring Me Some Apples and I'll Make You a Pie: A Story About Edna Lewis 果樹園と畑に囲まれた楽園

自然の恵みを収穫し、旬の野菜・果物を食卓に運ぶ「食」の原点を語り続けた料理家エドナ・ルイス(1916-1992)。絵本『Bring Me Some Apples and I'll Make You a Pie: A Story About Edna Lewis』で、少女期の暮らしぶりを知り、ひたむきな食へのこだわりに心…

ちなみに、ブルーカンガルー・シリーズ

たくさん出ているのですね。わたしは一冊目しか持っていませんが、とてもかわいらしいお話でした。全部読んでみたいなあ。これだけ鮮やかにお目見えすると、そそられてしまいます。だいすきよ、ブルーカンガルー! (児童図書館・絵本の部屋)作者: エマ・チチ…

Hansel and Gretel 魔女の内面を描く心理童話

表紙のキラキラ加工が砂糖菓子のようで、子どもが喜びそう。しかもイラストはブルーカンガルー・シリーズ*1のエマ・チチェスター・クラークとあり、これはよい感じ……と吸い込まれるようにして手にした『Hansel and Gretel』。しかし、明るい多色使いのイラス…

my people モノクロ写真の美しさ

たった33の言葉を、どのように写真として表現するか。表題中の「ピープル」はいったい誰なのか――年寄り、若者、黒人、白人、それとも人々すべて? そして、その表情は、真剣なのか、陽気なのか、顔だけ、体全体?――。写真家である作者がまっさらな気持ちで詩…

邦訳された新刊絵本リスト

絵本手帖でご紹介した絵本が何冊か邦訳出版されていました。◆印をクリックすると、レビューに飛びます。 ドーナツだいこうしん◆ ドーナツだいこうしん作者: レベッカボンド,Rebecca Bond,さくまゆみこ出版社/メーカー: 偕成社発売日: 2009/01メディア: 大型…

ドン・ブラウンのノンフィクション絵本2冊

独立戦争をわかりやすくまとめた絵本『Let it Begin Here: April 19, 1775, the Day the American Revolution Began (Actual Times)』のレビューを書こう書こうと思っているうちに、タイタニック事故を伝える2冊目『All Stations! Distress!: April 15, 1912…

Home on the Range: John A. Lomax and His Cowboy Songs 民謡収集に捧げた生涯 

好きなものに魅せられて、一生を捧げる人生は美しい――。カウボーイ・フォークソングを集大成した米国の音楽学者で民俗学者、ジョン・エイヴリー・ロマックス(1867-1948)の伝記絵本『Home on the Range: John A. Lomax and His Cowboy Songs』を読んで、しみ…

The Lion's Share: A Tale of Halving Cake and Eating it, Too 動物たちのわり算、かけ算、分数物語

熟語"the lion's share"は「いちばん良い(大きい)分け前、うまい汁」(リーダーズ英和辞典)の意味で、イソップ物語の寓話が素になっている。エピソードにより内容が少し変わるのだけれど、いずれも大意は「力あるものがもっとも大きな取り分を奪う」とい…

We're All in the Same Boat ノアの箱舟ABC

『We're All in the Same Boat』は、ノアさんの作った箱舟に動物たちが乗り込んで、彼らの名称と行動を織り込みながら愉快な頭韻でABCを紹介する絵本です。でも、小さな子ども向けというよりも、就学以上の子どもたちにこそ向く内容かもしれません。そこには…

Doo-Wop Pop 音、リズム、アカペラ

『Doo-Wop Pop』は、引っ込み思案で恥ずかしがりやの生徒5人が、学校のカストディアンのおじさんからアカペラの楽しさを教えてもらう絵本。 耳を澄ましてごらん。聴こえるものを、すべて声に出し、リズムにしてみよう。その昔、いかしたスーツをまといスポッ…

よぞらを みあげて

『At Night』*1の邦訳『よぞらをみあげて』が出ていました。都会の夏の夜を描いたこの絵本、けっこうお気に入りだったので日本語にも非常に興味が湧きます。 →At Night 都会の夜に吹く風は…… - 絵本手帖 amazon:Jonathan Bean よぞらをみあげて作者: ジョナ…

Spuds ジャガイモ

『Spuds』――これは貧しい時代のお話。たぶん、大恐慌の頃。ケニーさんちのジャガイモ畑は大豊作。掘ってあげないといずれ腐ってしまうと読んだ姉のメイベルは、弟のジャックと小さなエディを誘い夜の畑に忍び寄る。ほっかほかのふかし芋を想像しながら。でも…

アマゾン・キンドル2について、あれこれ

2月10日付けのアマゾンメールに、キンドル2近日発売のお知らせがあった。厚さわずか1/3インチ、重量も10オンスそこそこで普通のペーパーバックよりも軽い。キンドル1よりずっとスリークで機能美を見せ付けてくれる。ページめくりが速くなり画像も鮮明に。1…

The Firefighters 消防士さんにあこがれる子どもたち

『The Firefighters』は、ごっこ遊びの醍醐味を描いた絵本。遊びのテーマは「消防士」です。ウィーウーウィーウーのサイレンに始まり、アイバーソン先生までいっしょに消防車に乗り込みました――消防車はもちろん、段ボール箱の底をくりぬいたもの。こういう…

Quinito, Day and Night クィニート・シリーズ2冊目

『Quinito's Neighborhood / El Vecindario De Quinito』に続くスペイン語併記の二か国語絵本、2冊目『Quinito, Day and Night/Quinito, Dia Y Noche』は、クィニート少年が反対語を紹介します。「早い/遅い」「低い/高い」「若い/年配」……などの表現を日…

Seabiscuit the Wonder Horse アンダードッグが人々を熱狂させたお話

1930年代初頭の米国。大恐慌のあおりで暮らしがどん底にあった一方で、人々に明るい話題を振りまいた競走馬シービスケット。『Seabiscuit the Wonder Horse』は、弱小な気まぐれ馬を最強にまで育てた影の人々を紹介し、1938年11月1日に行われた大本命ワー・…

The Great Paper Caper 木を切るクマ

森の光景が少しずつ変わり、ただごとでないと原因を突き止めようとする動物たち。斧で木を切るクマの存在が浮かび上がったが、いったい何のために木を切るのか。オリバー・ジェファーズの新作絵本『The Great Paper Caper』には、遠まわしに、木を切り森を破…

baby mammoth 一番寒い月の絵本(2月)

baby mammoth8号でご紹介した絵本7冊*1が、「絵本ブロガーがリレーで選ぶ秋冬のブックガイド:一番寒い月の絵本(2月)」として同サイトに掲載されています。 小さな読者たちのことを想いながら、あれにしよう、これにしよう……と絵本のリストアップに思考回…

Dog Day これまた、犬好きさんに贈る絵本

表紙に描かれた半分のお顔が誘ってくれます。『Dog Day』は、ある日、学校に行ってみたら、新しい先生が「犬」だったというお話。先生の名前は、リフ。リフ先生の"Woof! Woof!"に始まって、子どもたちはみんなでしっぽ(人間なので、おしり)を振ったり、体…

2009年のバレンタイン絵本リストです。

今年は、邦訳が出たばかりの『ゴリオとヒメちゃん (児童図書館・絵本の部屋)』を筆頭に挙げようと思います。続けて熱く愛の意味を語る美しい『Beauty and the Beast』を原書で。レビューはないのですが、『だいすき。 (BOOKS POOKA)』も加えました。◆をクリ…

Posy こねこのポージー 

こねこのシマ猫を描く『Posy』は、もちろんイラストも十分に魅力的なのだけれど、それ以上に言葉のイメージが可愛らしい。韻を踏んだリズムと合わせ、言葉だけで十分にこねこと遊べる詩の世界が広がっていく。メンタル・イメージの威力、ここにあり。 メンタ…

Naked Mole Rat Gets Dressed いろいろあるのが一番じゃ〜を讃歌する絵本

モーさんの新作『Naked Mole Rat Gets Dressed』は、裸んぼうが当たり前のハダカデバネズミ社会で、たった1匹洋服を着たがるネズミの葛藤を描く絵本。モノカルチャーの規範、あるいはイデオロギー的政治体制を皮肉っているのか。この手のテーマは、いかにも…