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Me, Frida カーロ・フリーダの旅立ち

メキシコの女性画家カーロ・フリーダを語るノンフィクション絵本。代表作の一つ「フリーダとディエゴ・リヴェラ」の生まれた背景を描く。 若く無名だったフリーダは1930年11月、夫であり、すでに名声を得ていた画家ディエゴ・リヴェラとともにサンフラ…

Out of Sight 大きくて楽しい、かくれんぼのあてっこ絵本

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"Out of Sight"を手にして、驚愕。大きい。楽しい。アート感覚、遊び心にあふれている。こういうしかけ絵本を見てしまうと、「さすがフランスの絵本だ!」と誰が賛辞を述べずにいられよう。 基調はモノクロ。窓のようにめぐらされためくりを開くと、そこに動…

Beautiful Oops! 失敗から学ぶことこそクリエイティブ!

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"Beautiful Oops!"は、今年に入って一番のお気にいり。思わぬところで失敗をして気持ちがふさいでいるときに、そんなことないよ! と声をかけてくれる絵本です。とくにアート好きな人にはたまりません。そうでなくてももちろん、とびきりの元気がもらえます。…

In the Wild 迫力の動物たち

"In the Wild"は、詩の指導にぴったりかもしれない。大判サイズで、動物たちが見開きページからはみ出しそうな構図で、タイトルのとおり絵本もワイルドだ。こちら側に、今にも迫ってきそうな距離感が効いている。木版画の素朴さに野生味が加わり、アート絵本…

Mimi's Dada Catifesto ダダイズムと遊ぶ猫

ダダイズムって、何だろう? 定義を読み、それなりに理解はしているつもりでも、このアートフォームを身を持って体験したことはない。その定義だが、広辞苑によると「ダダはあえて無意味な語を選んだもの。(……たしか、無造作に開いた辞書のページにナイフを…

Walden Then and Now: An Alphabetical Tour of Henry Thoreau's Pond ヘンリー・ソローの生きた森

渡米したばかりの頃、地元新聞に掲載される'Then & Now'コラムを毎週楽しみにしていた。市内の一か所を取り上げ、当時の写真と同じ位置から撮影した現在の写真を掲載し、歴史家が街の変遷について語るといった内容だった。昔の写真は50年ぐらい前のものだ…

Who Stole Mona Lisa? モナ・リザのたどった運命

名画モナ・リザをめぐる数奇な運命をユーモラスに紹介する絵本が、"Who Stole Mona Lisa?"である。レオナルド・ダ・ヴィンチに寵愛されて描かれ、その後、10人にも及ぶフランス国王の手に渡り、ナポレオンを通じてルーブル美術館に寄与されたモナ・リザ。…

Ballet for Martha マーサ・グラハム、アーロン・コープランド、イサム・ノグチによる「アパラチアの春」

新しいものを創造するとは、どういうことか。加齢に伴い古典に傾倒している自分にとり、「俗」に宿る新しい無限性の追求は、とりあえず時間の無駄のように思えていた。「雅」はやはり古典に存在する。古典あってこその「俗」であり、研ぎ澄まされた文化の始…

Seasons 版画でめぐる四季の絵本

とてもユニークな絵本に出会った。"Seasons"は、厚さ約2センチの質感たっぷりの版画絵本。赤、青、黄に緑と茶のみというシンプルな配色が印象的だ。色だけでなく装丁もレトロ感たっぷりで、ページを開くとたちまち1950年代前後ににワープする錯覚に陥る…

Ernest, the Moose Who Doesn't Fit はみだしっ子の物語

かわいいなあ! 大きいのと小さいのと、サイズの対照的なキャラクターが登場するお話は、その設定だけでひきつけられる。"Ernest, the Moose Who Doesn't Fit"は、体が大きすぎて本の中におさまらないムースのお話だ。でも、確かに悩みを抱えるムースのアー…

Art & Max アートの真髄

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久々にウィーズナーの絵本を手にして、彼のアート魂を垣間見せてもらったような気がする。"Art and Max"の主人公は、トカゲのアーサーとマックス。アートことアーサーはすでに地位を確立している画家で、マックスはまったくの素人という設定だ。 舞台はアリ…

I know a lot of things ポール・ランドの世界

ポロポロ、ポロンと、余白にこぼれ落ちる音符のようなイラスト。ポール・ランドの絵を初めて見たときの印象は、空間に踊るピアノの音色といっしょにやってきた。今、こうして原書"I Know a Lot of Things"を手にしてみて、それはアルファベットだから、さら…

Paris in the Spring with Picasso ピカソの春

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画家ピカソのパリ在住時代をフィクションとして描く"Paris in the Spring with Picasso"を読んで、一世紀昔に想いを馳せた。パリの街並み、時代背景、彼の交友関係……ところどころに飛び出すフランス語の会話がそれはもう洒落ている。舞台と時間はだれにも平…

Call Me Gorgeous! ゴージャスは最高のほめ言葉なり

トナカイの角、ブタの耳、ハリネズミの針、ワニの歯、オオハシの嘴、フラミンゴの首……さまざまな動物の一部を持ち合わせているワタシは誰? ヒントに挙がる動物は体の一部だけを見開きページにのぞかせて、ワタシの正体は最後まで明かされない。 その拡大さ…

Chasing Degas ドガおじさんを追いかけて……フランス印象派を伝える絵本

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アクリルと色鉛筆で描かれる、エスプリあふれるパリの街角。表紙の踊り子を見て「ドガ!」と胸が高鳴り、ページを開いてさらに興奮する。 開演迫る劇場の舞台裏。画家のドガおじさんは少女たちのリハーサルをピアノの音色に乗りながら素早く描き出した。主人…

An Eye for Color 抽象画家ジョセフ・アルバースの伝記絵本

正方形の配置と色彩変化で表されるスクエア・ペインティング――。よく目にはするけれど、誰の作品なのかまったく知らずにいた。"An Eye for Color The Story of Josef Albers"を読み、その存在がぐっと近くに感じられるようになった。 ドイツ人の抽象画家ジョ…

Dinothesaurs きょうりゅうさん、こんにちは! 夏休みにもってこい

"Dinothesaurus"――こういう詩の絵本、夏休みにぴったりだ。表紙からすでに誘っているじゃないか。見開きごとに恐竜の個性が詠われ、恐竜大好きっ子にはたまらない。そうでない大人でさえ、有史前の悠久のときに想いを馳せている。 フロリアンの詩と絵に、な…

A is for Art: An Abstract Alphabet 渾身の抽象・造形アート26点

息子が赤ちゃんの頃に話題となったコルデコット賞オナー絵本"Alphabet City (Caldecott Honor Book)"は、彼のお気に入りABC絵本だった。リアリスティックな水彩画は子どもの目にわかりやすく、何度もページを眺めては自分の身のまわりにもどこかにABCの文字…

あかいはな さいた

『大型絵本 あかいはなさいた』は何よりも、「赤い色」に魅せられる自然界の真理を証明する。人の心を吸い込むように赤い花たちはみな、自分の個性をその色に託していた。 表紙の松葉ぼたんがまず、懐かしい。この花は子どもの頃、どの家の玄関先でも、よく…

The Pencil えんぴつくん

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そういえば今日、車の中で、娘がちびた鉛筆を見せてくれたのだった。よって『Pencil』(邦訳『えんぴつくん』)を手にして、たちまち親近感に包まれる。 絵本では、淋しいえんぴつくんが主人公。でもお絵かきすることでまわりがどんどん賑やかになり、最後は…

Sandy's Circus: A Story about Alexander Calder 彫刻家・現代芸術家アレクサンダー・カルダーの世界

切れたバイオリンの弦で娘がウサギ、ウシ、ネコを作ってくれた。わたしも好きなのだ、ワイアー・アート。自由自在に形を変えられ、同時に小さな空間作りが楽しめる。「サンディもこうやって作ったんだよね」とやけに親しみを込めて言うので尋ねてみると、絵…

Little Beauty 美女と野獣おちゃめナンセンス絵本

何と言おうか、アンソニー・ブラウンだからこそなしえた、おちゃめな美女と野獣の世界。『Little Beauty』(邦訳『ゴリオとヒメちゃん (児童図書館・絵本の部屋)』)は、大人かわいい2匹の関係をリアリズムと素描にユーモアを絡めて描く、きわめて稀な絵本で…

Peter and the Wolf ラシュカのピーターとおおかみ

ホリデーシーズンを振り返ると、何冊か記録していなかった絵本がありました。クリス・ラシュカの『Peter and the Wolf』 "*1も、その一冊。 こちらは紙製の立体舞台じかけを写真撮影し絵本化したという、なかなか凝った作品です。雰囲気がクリスマス期にお似…

Please Don't Tease Tootsie お花にかこまれたかわいいペットちゃん

もろに娘、息子のテイストにぴったりな絵本が『Please Don't Tease Tootsie』です。ペットたちの表情、子どもたちの行為、お花に囲まれたしあわせいっぱいの見返しイラスト……どの視点からも、うちのために作られたのでは……と思えてしまいます。 絵本にストー…

くるみ割り人形

降誕日に読んだ絵本は『くるみ割り人形』。イブの夜にもらったくるみ割り人形をめぐる少女マリーの夢と愛、勇気を描くファンタジーです。最後にこっけいな姿のくるみ割り人形と結ばれる物語は、少々「美女と野獣」的なテーマも含まれます。真の愛情を貫いた…

ほしのひかった そのばんに

『ほしのひかったそのばんに』は、最初のクリスマスをわかりやすく伝える絵本です。新訳聖書「マタイによる福音書」「ルカによる福音書」のイエス降誕に至る場面を、やさしく語っています。 深紅の表紙には、「さあ、こっちよ」とベツレヘムを指差しているか…

Usborne's 50 Christmas Things to Make & Do クリスマスのクラフトブック

『50 Christmas Things to Make and Do』で提案されるクリスマスクラフトは、かわいいし簡単。非常にアーティスティックで一目で気に入ってしまった。主にペーパークラフトやコラージュが中心で、子どもが気軽に取り組めそうだ。 アドベント期間中は、この本…

One Boy 窓からのぞく向こうの世界

シーガーの最新しかけ絵本『One Boy』を堪能。穴あきの向こうに見える対象物がページをめくると詩の一節となり、異なる印象で登場する。たとえば、タイトルの"ONE BOY"が次ページでは"ALL ALONE"と続く。"TWO SEALS"は、次ページに"AT THE SEA"。前ページの…

The Pet Dragon: A Story about Adventure, Friendship, and Chinese Characters 漢字を紹介するゆかいな冒険絵本

ドラゴン、老婆、万里の長城――主人公の女の子リンがまるでムーラン*1のような衣装を身に着けているかと思いきや、時代設定は実は現代。中国を訪れ「漢字」に魅せられた作者が、近代化の波が押し寄せる北京を舞台に「漢字」の紹介と冒険をドッキングさせたユ…

Little Mouse's Big Book of Fears こわがりネズミさんの絵本

絵本をアートメディアとしてとらえ、創作、表現するエミリー・グラヴェット。『Little Mouse's Big Book of Fears (Kate Greenaway Medal)』を手にしてあらためて強く感じた。 主人公は、こわがりネズミさん。蜘蛛、虫、お化け、ナイフ、お風呂、水、大きな…