fantasy

Shadow ……やはり予想どおりの傑作

サイズといい、二色使いの構成といい、スージー・リーの最新作"Shadow"を見て即座に"Wave"(『なみ (講談社の翻訳絵本)』)を想起した。手にしてみて、それは大正解。こちらも文字なしで、シンプルな題材を用い、愉快なイマジネーションの世界を繰り広げてい…

Chalk 魔法のチョーク

"Chalk"は、雨の公園に繰り広げられた魔法の時間を描く。その魔法の正体は、「チョーク」。 恐竜の遊具に置き忘れられていたバッグの中には、色とりどりのチョークがいっぱい。3人の子どもたちはしとしと雨の降る中、チョークに手を伸ばし、コンクリートの…

Tales from Outer Suburbia SF風哲学書……村上春樹ワールドに思えたりも……

異空間の短編絵本集。15編のショートストーリーが収められた"Tales From Outer Suburbia"を読みはじめ、まったりと不思議な気持ちに浸っていた。暗示は何か、象徴は何か。文章を読み、裏を読もうとするばかりの自分がいる。思考が、ぐるぐる。 ストーリー…

ヌンヌ

週末でみなスキーに行ってしまったので、ゆっくりと書こう。 先週末に届いた『ヌンヌ』がもうとびっきりすてきで、ここ一年で一番好きな絵本になった。帯に書かれた「フィンランドの本屋さんの熱い支援を受け、復刊された名作絵本!」の言葉「名作」に偽りは…

The Sea Serpent and Me 水彩が幻想的

"The Sea Serpent and Me"はイラストに魅せられて手にした。水道の蛇口から出てきた小さなウミヘビと繰り広げるファンタジー絵本。緑とか青の重なり具合が幻想的で、お話よりも絵のほうに吸い寄せられる。透明水彩が物語のテーマにぴったりだった。他の作品…

The Way Back Home 男の子と火星人

"Way Back Home"は、月に不時着した男の子と火星人のほのかな友情を描く絵本。子どもはこういう空想絵本、好きだろうなあと思いながらページをめくった。大人は、先が読めてしまうかもしれないけれど。 つまよう枝を刺したかのようなキャラクターたちの「足…

Carousel わたしのメリーゴーランド

いろいろなことが偶然に重なり、その意味からも今日は『わたしのメリーゴーランド』について記しておこうと思いました。まず、重なった事象とは――①一昨日、メリーゴーランドがテーマの絵本を紹介していたこと。②色の魔術師ブライアン・ワイルドスミスに師事…

Wonder Bear 今年のクリスマス・プレゼント その1

どこへ足を運ぶにもクリスマス・プレゼントへの想いが駆けめぐり、あれにしようか、これにしようか――今週が一番迷いに迷うころではないでしょうか。その点「贈り物は本」と決めておくと、それだけで目的地がはっきりするので非常に助かります。娘には今年、…

つばさを ちょうだい

お日さま、花たば、夏草、さざ波……、自分の好きなものばかりが散りばめられた絵本に出会いました。きらきらとまばゆい宝石箱のようなその絵本は、『つばさをちょうだい』。男の子と小さな天使が繰り広げる、可愛らしい夏のファンタジーです。 木目の美しい板…

Friday My Radio Flyer Flew 思いっきり遊ぶ

おもちゃの赤いワゴン車"Radio Flyer"で空を飛ぼうとする父子が主人公。イラストの構図が突拍子もなく大胆で、自分も赤ワゴンに乗り込む気分にさせられた。分厚い色使いで塗りたくられた親子の表情を見ているだけで、ぐい〜んと魔法がかってくるのだなあ。ほ…

のいちごそうは どこにある?

さわやかな初夏にぴったりの絵本に出会いました。『のいちごそうはどこにある?』は、ホップさんという「ちいさなひと」と森の動物たちが繰り広げる愉快なお話です。北欧の自然を背景に、親しみのある美しい日本語が語りかけます。 ホップさんはシュスリング…

Sally and the Purple Socks サリーとむらさきのくつした

娘と本屋さんへ。例によって友だちの誕生プレゼント探しです。『Sally and the Purple Socks』を読んで娘と大受けしました。ちょっと評判の絵本でしたが、あまり期待せずページを開いて、わっはっはーと大笑い。娘がこれをプレゼントにしたいと言い出して、…

くまのプーさん プー横丁にたった家

3月10日に101歳のお祝いを迎え、その春に逝去された石井桃子さん。桜の美しい季節に安らかに逝かれ、子どもの本に大きな業績を残された石井さんに相応しい春ではなかったかと偲びました。 『クマのプーさん プー横丁にたった家』は、作者ミルンが息子…

Trainstop 今度は小人の国へ

『Trainstop』は、バーバラ・リーマンの文字無し絵本第4弾です。 ここにきて、少し趣向が変わりました。平面的というか、今までのような空間をうねって入っていく深さが感じられません。しかし、だからといってこの絵本が普通なのかといえばそうでもない。切…

Puff, the Magic Dragon 子どもの成長を見つめるテーマソング

子どもたちが巣立っていくとき、わたしの中ではこの歌がBGMとして流れているんだろうなあと感じた絵本です。ピーター、ポール&マリーの人気フォークソングをそのまま、今度はピーター&彼の娘さんが歌いCD付きの絵本にしたのが『Puff, the Magic Dragon』で…

A Sea-Wishing Day 海に出かけたいなあ

行水用プールで海に夢をはせて遊んでいるうちに、海賊やモンスターが現れた。『A Sea-Wishing Day』では、都会の片隅に住む男の子が広い大海原で大冒険を繰り替えす。 イラストの色重ねが魅力。登場キャラクターよりも、背景に描かれる海や波の「色」に魅せ…

Water Boy 水に魅せられた空想の旅

人間の体はほとんどが「水」でできている。学校でそう習った男の子は、「水」に対してさまざまな想像を働かせた。「雨の中だと、いっしょに水になって流れていっちゃうのかな」「雪だるまといっしょに凍っちゃうのかな」「猫にひっかかれたら、そこから水が…

Ghost Ship 潮風に吹かれ歴史をひもとけば……

『Ghost Ship』は、久々に息子と読んだ絵本。 トーマス・フレミングは夏になると、ケープ・コッドの祖母の家で休暇を過ごす。築後200年以上を経た家は海岸沿いに立ち、その昔土地の名士でもあったアンドリュー・ハレット船長が所有していた。ある日、砂浜で…

The Zoo モノトーンと色の織り成す動物園のファンタジー絵本

お父さん、お母さんといっしょに動物園に来た女の子。彼女はそこで、動物たちと遊び出す。檻の中にいるはずの動物たちが見えない。でも、女の子は楽園で、動物たちと楽しそうに遊んでいた。――これは、絵本『The Zoo』での風景。 ところで、シアトルの動物園…

かたつむりハウス

摘みたて苺をほおばる息子と『かたつむりハウス (児童図書館・絵本の部屋)』(原書『The Snail House』)を読みました。冒頭がちょうど、苺摘みから戻る場面なので、これはぴったりです。娘も誘いましたが、「この絵本、日本で読んだ」とのこと――そういえば…

The Little Red Fish 本の森で赤い魚を追う

水曜日。息子は野球の練習後、アート教室に向かう。その間、娘といっしょに立ち寄った書店ですてきな絵本に出会った。 宝物のように大切にされ、世に生まれたのではないか、というのが『The Little Red Fish』を手にしたときの第一印象だった。赤い布装丁、…

The Weather Fairies Series 空模様の妖精シリーズ

レインボーマジック妖精シリーズ*1の次の七冊は? 娘といっしょに調べ、わくわくしてしまった。今度はお天気、空模様の妖精が登場する。ここまでくると、娘と「じゃあ、その次は?」ということになり、ミュージカルフェアリー、フルーツフェアリーといろいろ…

Ruby the Red Fairy 赤の妖精ルビー

「レインボー・マジック」シリーズの存在を知り、娘にぴったり!と『Rainbow Magic: Ruby the Red Fairy: The Rainbow Fairies Book 1』(邦訳『赤の妖精ルビー (レインボーマジック 1)』)に飛びついた。虹の妖精のお話と聞いて、ときめかない女の子はいな…

The Adventures of the Dish and the Spoon おさらとおさじの大ぼうけん

「Hey Diddle Diddle/The cat and the fiddle」で始まる英国童謡は、わたしが最初に覚えたマザーグースの歌である。息子が赤ちゃんの頃、「Wee Sing, Mother Goose」のテープを聴きながら童謡絵本を開いては歌っていた。だからミニ・グレイの新作『The Adven…

ナツメグと魔法のスプーン

『カクレンボ・ジャクソン』に魅せられて、『Nutmeg』を購入した。お鍋やスプーンなどキッチン用品といっしょにマジカルな風に巻き込まれている表紙のナツメグがとってもかわいらしかったし。 ところが表紙の印象とは裏腹に、見返しの光景はうたた荒涼たるも…

「大人の絵本」とうたう絵本

まず絵本『Where's My Cow?』の元となる小説『Thud! (Discworld)』を読んでいないので、たぶん絵本鑑賞は半分ぐらいの味わい方しかできていない。それでも、英国屈指のストーリーテラー、プラチェットの描く絵本版ディスクワールド(=空想世界)には十分ひ…

欲張り過ぎた、奇妙きてれつマジカル絵本『Jungle Gym Jitters』by Chuck Richards

『Jungle Gym Jitters』は、何だか知らないがいろいろなところで耳にしていたような気がする。ならば実物を見てみようと図書館で借りてきた。 うわ〜お、これはただ者ではないイラストレーション。大判サイズにクローズアップの驚愕顔――この表紙からして目ま…

何だろう、このちょっぴり怖い夢のようなお話は

センダックファンの知人から「全作品中、これが1番」と太鼓判を押された絵本が『ふふふんへへへんぽん!?もっときっといいことある』である。センダックのことだから一筋縄では行かないんだろうと、うっすらと先入観を抱いて読み始めた。 原書タイトルは『H…

美しさと怖さの秘密

『まどのそとのそのまたむこう (世界傑作絵本シリーズ)』に出会い、これは尋常な絵本ではないと思った。可憐な子どもの絵本に、死神を想起させるマント姿のゴブリンを描くなんて、どう考えても普通じゃない。洞くつの描写には、何かグリム童話にも通じる暗さ…

こんなキッチンに出かけてみたい

怪獣絵本に続いてセンダック作品で夢中になったのが、『まよなかのだいどころ』。息子が好きそうと思っていたら、案の定、彼も夢中になった。何がいいのかといえば、真夜中の冒険だろう。「思う存分」という感覚が子どもを魅了するのだと思う。パン生地にこ…