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Underground: Finding the Light to Freedom こどもたちに語るどれい制度

"Underground"は、単純明快に奴隷制度の背景を語った絵本だ。自由を求めて逃亡した人々の息づかいを、わかりやすい言葉と絵で伝える。たとえば冒頭はこんな感じ。 The darkness. ページをめくった次の見開きで、 The escape. さらにページをめくると、 We ar…

She Loved Baseball: The Effa Manley Story 女性初、アメリカ野球殿堂入りを果たしたエファ・マンリーの物語

2006年、女性で初めてアメリカ野球殿堂入りを果たしたエファ・マンリーの伝記絵本。殿堂入りは、夫のエイヴとともにブルックリン・イーグルス(のちにニューアーク・イーグルス)のオーナーとして黒人野球リーグ(ニグロ・リーグ)の発展に貢献し、選手…

How the Sphinx Got to the Museum エジプトとMETのスフィンクス

ニューヨーク市メトロポリタン美術館が貯蔵するスフィンクスの歴史を紹介する絵本。しかしながら、折りしもエジプト情勢が揺れる中で歴史をふりかえる。 このスフィンクスの成り立ちはわかったのだが、一番知りたかったことは、どのようにして米国にわたるこ…

Black Jack: The Ballad of Jack Johnson ボクシング界のブラック・ジャック

ブラック・ジャック(1878年テキサス生まれ)は黒人初のボクシング・ヘビー級チャンピョン。人種差別の時代に人種の壁を乗り越えて、名実ともにパワーを見せつけた。その世紀のマッチはオーストラリアのラシュカターズ・ベイで執り行なわれたというから…

Mimi's Dada Catifesto ダダイズムと遊ぶ猫

ダダイズムって、何だろう? 定義を読み、それなりに理解はしているつもりでも、このアートフォームを身を持って体験したことはない。その定義だが、広辞苑によると「ダダはあえて無意味な語を選んだもの。(……たしか、無造作に開いた辞書のページにナイフを…

Kubla Khan: The Emperor of Everything

"Kubla Khan: The Emperor of Everything"(予定)Kubla Khan: The Emperor of Everything作者: Kathleen Krull,Robert Byrd出版社/メーカー: Viking Books for Young Readers発売日: 2010/09/16メディア: ハードカバーこの商品を含むブログ (1件) を見る

Ruth and the Green Book グリーン・ブックを携えて

"Ruth and the Green Book"を読み、「グリーン・ブック」の存在を初めて知った。グリーン・ブックの初版は1936年。奴隷解放宣言がなされた後も、南部州を中心に黒人への差別が続いていた当時、ニューヨーク市に住むビクター・グリーンがアフリカ系米国人…

Walden Then and Now: An Alphabetical Tour of Henry Thoreau's Pond ヘンリー・ソローの生きた森

渡米したばかりの頃、地元新聞に掲載される'Then & Now'コラムを毎週楽しみにしていた。市内の一か所を取り上げ、当時の写真と同じ位置から撮影した現在の写真を掲載し、歴史家が街の変遷について語るといった内容だった。昔の写真は50年ぐらい前のものだ…

Who Stole Mona Lisa? モナ・リザのたどった運命

名画モナ・リザをめぐる数奇な運命をユーモラスに紹介する絵本が、"Who Stole Mona Lisa?"である。レオナルド・ダ・ヴィンチに寵愛されて描かれ、その後、10人にも及ぶフランス国王の手に渡り、ナポレオンを通じてルーブル美術館に寄与されたモナ・リザ。…

Summer Birds: The Butterflies of Maria Merian 蝶々を愛でた女の子

昆虫や爬虫類は、少なくともわたしの知る限りの米国で、子どもたちに人気のある生き物だ。身近な存在であるし、とくに小さな子どもたちの友だちといったような印象がある。虫関連のハロウィン・コスチュームといえば、赤ちゃんや幼児たちの代名詞みたいなも…

Dave the Potter: Artist, Poet, Slave 奴隷の陶芸家デイブ

表紙を見て震えのくる絵本というのがたまにあり、"Dave the Potter (Carter G Woodson Honor Book (Awards))"はまさにその種の一冊だった。陶芸家で詩人で奴隷――この三言を耳にするだけですでに、思考は二百年前の米国南部に飛んでいる。 奴隷は読み書き禁止…

Ballet for Martha マーサ・グラハム、アーロン・コープランド、イサム・ノグチによる「アパラチアの春」

新しいものを創造するとは、どういうことか。加齢に伴い古典に傾倒している自分にとり、「俗」に宿る新しい無限性の追求は、とりあえず時間の無駄のように思えていた。「雅」はやはり古典に存在する。古典あってこその「俗」であり、研ぎ澄まされた文化の始…

Busing Brewster 人種融合を目指したバス通学の背景

"Busing Brewster (NY Times Best Illustrated Children's Books)"は、70年代に起きていた米国の苦悩を明るく描く。1954年に人種隔離政策が撤廃されても、居住区域がすでに別々だったことから子どもたちの通う学校は黒人、白人に分かれたままの状態が…

We Are the Ship カダイアー・ネルソンへの3つの質問

→These Questions 3: Kadir Nelson - SweetSpot- ESPN 力強いイラストと語りで米国ニグロ・リーグの球史を伝える"We Are the Ship (Coretta Scott King Author Award Winner)"。このネルソンのイラストが切手になり、それに関してのインタビュー記事があった…

Pop! The Invention of Bubble Gum フーセンガム誕生の背景

1920年代の米国フィラデルフィアを舞台に、フーセンガム誕生の背景を伝えるのが"Pop!: The Invention of Bubble Gum"である。 フリアー一家の自営するガム工場で経理をしていたのは、若きウォルター・ダイマー。数字には強いけれどガムについてまったく…

Lincoln Tells a Joke: How Laughter Saved the President (and the Country) リンカーン大統領はジョーク好き

まじめ顔の伝記絵本が多い中で、"Lincoln Tells a Joke: How Laughter Saved the President (and the Country)"はウィットに富み、イラストもアーティスティックときているので、かなり異色かもしれない。 ところで、初めて絵を見たときにふわっと記憶の底か…

Sit-In: How Four Friends Stood Up By Sitting Down グリーンズボロー4人組の公民権運動

"Sit-In (Jane Addams Honor Book (Awards))"は1960年2月1日、ノースカロライナ州グリーンズボローのワーズワース・デパートメントストアで始まった公民権運動を描く。 この日、デイヴィッド、ジョセフ、フランクリン、イーゼルの黒人大学生4人は、人…

The Hallelujah Flight ハレルヤ飛行

"The Hallelujah Flight"は、黒人パイロットによる米大陸初横断飛行を描く歴史絵本である。 ジェームス・バニングは、米国商務省より飛行ライセンスを与えられた最初のアフリカ系米国人。航空ショーのスタントパイロットとして活躍していたが、彼の名前を世…

Marching for Freedom: Walk Together, Children, and Don't You Grow Weary 投票権法撤廃への道

投票権法撤廃への非暴力運動を描く"Marching for Freedom: Walk Together Children and Don't You Grow Weary"を読み、米国の公民権運動を振り返った。 1862年、リンカーン大統領による奴隷解放宣言で奴隷制度が廃止されても、南部諸州では人種差別が色…

Henry Aaron's Dream 若き日のハンク・アーロン

マット・タバラスのベースボール絵本にはハズレがないこともあり、"Henry Aaron's Dream"に注目した。今回はストーリーではなく伝記絵本。正統派のノンフィクション絵本である。 MLBの真のホームラン王*1ハンク・アーロンを描くと聞けば、誰もが華々しか…

Old Penn Station NY ペンシルべニア駅の歴史

ニューヨークに行ったことはないけれど"Old Penn Station"を読み、飴色の灯が照らす華やかな時代のペンシルベニア駅を想像してみた。 1910年、時代の興盛に乗りペンシルべニア鉄道会社はハドソン川の下にトンネルを掘り、同駅をオープンさせた。それまで…

Stagecoach Sal 果敢に歌い続けたサリーのお話

実話をもとにしたという"Stagecoach Sal"がおもしろかった。怪我をした父親のかわりに駅馬車の御者を務めるサリー。子どもの頃から乗りなれてるとは言え、一人で任務を遂行するのは初めてだ。カリフォルニア州ユカイアからウィリツへ、彼女は郵便を届ける旅…

Back of the Bus 少年の目から見たバスボイコット

"Back of the Bus"はロザ・パークスのバスボイコットを、少年の目を通して描く絵本である。1955年12月1日、アラバマ州モンゴメリー。夕暮れどき、バスの騒音、運転手の声、ざわめき――歴史的瞬間を描くというよりも、その日、そのバスにどのような時間…

The Circus Ship ご当地絵本で歴史をひも解く『サーカス・シップ』

1836年10月29日、メイン州ポートランドに向かうロイヤル・タール号が遭難。乗員103名に混じって、サーカス団の動物たちも海に投げ出されてしまった。記録によると、ゾウ1頭、ライオン2匹、トラ、レオパード、馬6頭、ラクダ2頭、ヌー、ペリカン2羽、大蛇と鳥…

Darwin: With Glimpses into His Private Journal and Letters ダーウィンの人生

世に名を残す人の人生。好きなこと、というより、本能に刻み込まれた指向に動かされ熱中して続けているうちに、いつの間にか偉業を成し遂げている。継続の動機付けには必ず、きっかけとしての助言者(メンター)が存在することもだいじな要素かもしれない。…

Pippo the Fool  フィレンツェの鬼才ピッポのお話

イタリア・ルネサンスの建築家、フィリッポ・ブルネレスキの伝記絵本"Pippo the Fool (Junior Library Guild Selection)"に、しばし感動。公証人の家業を継がず、建築家として初期ルネサンス様式を確立した俗称「おばかのピッポ」が、フィレンツェのサンタ・…

My Uncle Emily エミリー・ディキンソンの意外な横顔

"My Uncle Emily"を読み、詩人エミリー・ディキンソンの人間味あふれる一面に触れることができた。家族以外に姿を見せることがなかったというディキンソン。隠遁生活に近い日々を送っていた彼女の存在は、とてもミステリアスに映る。白いドレスをまとい、言…

Tricking the Tallyman: The Great Census Shenanigans of 1790 米国初の国政調査のお話

"Tricking the Tallyman"は、建国や地元の歴史を学び始めた娘がクスクス笑いをこぼしながら読んでいた絵本。で、わたしも読んでみて、やっぱり面白かった。 ときは1790年。英国から独立し高らかに建国をうたった米国は、人口調査の必要性に迫られていた。徴…

ドン・ブラウンのノンフィクション絵本2冊

独立戦争をわかりやすくまとめた絵本『Let it Begin Here: April 19, 1775, the Day the American Revolution Began (Actual Times)』のレビューを書こう書こうと思っているうちに、タイタニック事故を伝える2冊目『All Stations! Distress!: April 15, 1912…

Seabiscuit the Wonder Horse アンダードッグが人々を熱狂させたお話

1930年代初頭の米国。大恐慌のあおりで暮らしがどん底にあった一方で、人々に明るい話題を振りまいた競走馬シービスケット。『Seabiscuit the Wonder Horse』は、弱小な気まぐれ馬を最強にまで育てた影の人々を紹介し、1938年11月1日に行われた大本命ワー・…