summer

The Garden of Abdul Gasazi

ハロウィン菓子で砂糖漬けになった夜、ねずみちゃんになった娘といっしょに『The Garden of Abdul Gasazi』(邦訳『魔術師アブドゥル・ガサツィの庭園』)を読んだ。季節は外れているけれど、魔法使いがご登場ということでハロウィンのような不思議さが漂う…

Stanley Mows the Lawn スタンリー 芝を刈る

無機質な清涼感。そこには確かに温もりも存在し、不思議な読後感を味わった。商業デザインの真髄を行くようなデフォルメされたイラストで、絵心が表現できるのか。表紙の印象とは裏腹に、扉を開けば詩的な空気の流れるページが広がった。気鋭のグラフィック…

HERON & TURTLE さぎこさんとかめきちくん(へロンさんとタトルくん)

こんな仮題をつけてしまうと何だかイメージが狂ってしまうかな。画家の新しい絵本ということで『Heron and Turtle』を読んでみたのだが、読後にじわじわと作品の味わいに包まれた。ちょっと、がまくんとかえるくんの世界に通じるものがある。絵本には珍しい…

Nosy Rosie はなをくんくんロージーちゃん

きつねのローズは匂いに敏感なので、なくし物を探すことが大のお得意。無くなった野球のボールを草むらから捜し出したり、忘れて置きっぱなしになっていた弟のミルクびんを郵便受けから取り出したり、ローズの活躍にみんなは大助かりだった。ところが、そん…

すきすき ちゅー!

登校前に時間があったので、娘と『すきすきちゅー!』(原書『Hey, I Love You!』)を読んだ。晩ご飯を取りに行くため森の向こうに出かけてゆくお父さんねずみと、留守番をする子ねずみちゅーちゃんのお話。 お留守番の決まり「かけがね がっちゃん、かぎを …

Summer is Summer なつがいっぱい

四季の中で一番好きなのは、実は夏だったりする。その季節それぞれに美しさがあるのだけれど、ひとつ選んで!と言われたら夏を選ぶだろう。誕生月が七月だから、潮風の気持ちいい季節だから、空と海に魅せられるから……と理由はいろいろある。でも、軽装で楽…

My Father the Dog とうさんは いぬ

とうさんは にんげんのふりをしているけど、ほんとうは いぬなんだよ。だって、こんなことが あるもの――。 『My Father the Dog』は、米国中流家庭の日常とその典型的父親像が子どもの視点で描かれる絵本。「中流家庭」「典型的」と言い切ってしまってよいも…

Captain's Purr ねこのせんちょう

終日のたり、のたり風の夏の午後に楽しんでおきたかったな。『Captain's Purr』(邦訳『ねこのせんちょう』)を子どもたちといっしょに読んでの感想。家に一匹、こういうテンポの生き物がいると、日常の流れに余裕が生まれるものだ。眠りほうけて、身だしな…

Bats at the Beach こうもりたちのなつやすみ

『ISBN:061855744X:title』の図書館待ち番号は、確か四十七番。ええー! 四十六人もの読者を待っていたら、回ってくるのはたぶん来年の春あたり? そんなわけで、書店で人気絵本を読んだ。 たそがれ時から夜にかけ、ときに不気味に闇を飛び交うコウモリの集…

Flotsam SF、ミステリー、ファンタジーもどき摩訶不思議なウィーズナーの世界

話題になっていたので『Flotsam (Caldecott Medal Book)』(邦訳『漂流物』)を手にしたけれど、聞きしにまさる文字なし絵本だった。 顕微鏡で浜の生態を観察していた少年が、波に打ち寄せられた年代物のカメラを拾う。中にあったフィルムを現像してみると!…

ウィンクルさんとかもめ

潮風とかもめの声に包まれた『ウィンクルさんとかもめ (大型絵本)』は、当地にぴったりのお話である。舞台は英国の港町でも、湿った潮の香りがする港の様子は北方の港町であればきっとどこでもいっしょだろう。うっすらと晴れた空、かすんだ水平線、市場の活…

Cloud Boy/ Nino Nube くものぼうや

ベイビーブルーがかわいいなあと思い手にした『Cloud Boy/Nino Nube』。作者がメキシコ系米国人ということで、文章はスペイン語併記である。 ストーリーは雲をテーマにしたものによく見られるタイプ。形がいろいろ変化するという展開は別にどうというもので…

人魚ひめ ツヴェルガーの描く海洋世界

ときにつめたく感情のない海洋世界を描くのにもっとも適した絵画ではないかと思えたほど、ツヴェルガーの『アンデルセンの絵本 人魚ひめ』は透明感があり美しかった。ガラスのようにはかなく透き通った心が示され、読む側は切ないやら、悲しいやら。大人だか…

SEA HORSE:The Shyest Fish in the Sea タツノオトシゴ ひっそりくらすなぞの魚

タツノオトシゴ――なんて不思議な生き物なんだろう。容姿も名前も一度目にしたら忘れられない非日常性を持ち合わせ、一瞬作り物じゃないかと疑ってしまうような存在。謎に包まれた魚――魚なのである!――は、生態もとびきりユニークだ。エリック・カールの『Mis…

SHARK AND LOBSTER'S Amazing Undersea Adventure サメじろうとザリガニえもん 海の中のだいぼうけん

サメじろうとザリガニえもんは、大の仲よし。ある日、サメじろうが実態を知りもしないのに、「トラが怖い」と言い出したところからへんてこりんな騒動が巻き起こる。「聞いたことがあるよ、とがった歯で歩いて、闇の中で光り、何でもガブリって食べちゃうん…

BEACH

この夏は、まだ一度もビーチに足を運んでいない。原因を考えてみると、デイキャンプとベースボールに忙しい息子とお天気の歩調が合わないことに気づく。ああ、明日にでもビーチに行かなくちゃ。絵本『Beach』を開き、ますます衝動に駆られた。砂浜でのんびり…

The serpent came to Gloucester

『The Serpent Came to Gloucester』は1817年の夏、マサチューセッツ州グロスター沖に現れた大海蛇を巡っての実話を物語詩に仕立てた絵本である。この大海蛇を描いた当時の絵は有名で、息子も知っていたぐらいだった。文献によると、グロスター町民は最初は…

Magic Beach

素描があまりにも上出来で、上から色を塗る気持ちの失せてしまうことがよくあった。たとえば小学生の頃、自分はそこで終わらせたいのに「早く色を塗りなさい」と先生に促されしぶしぶ絵の具のチューブを絞ったことや、これ以上、線や色を加えないほうが作品…

THE LAST BADGE

『The Last Badge』は、ボーイスカウトに所属する男の子にぴったりのお話。ユーモラスな設定と展開に引き付けられ、最後に息子と爆笑した。 サミュエル・モス少年は、12代目のグリズリー隊隊員。野外・社会奉仕に参加している誇りが、大きなスマイルに表れる…

たなばた

知っているはずのお話なのに、読み返してみて新鮮な驚きを体験した『たなばた (こどものとも傑作集)』。透明感あふれる水彩が天の川でのロマンスを淡く描き出し、ぽうっと甘美な思いに浸っていました。 天の川で水浴びをしていた際、着物を隠され飛べなくな…

なつのゆきだるま

『なつのゆきだるま (岩波の子どもの本)』は、独立記念日に読むのがぴったりの絵本。タイミングはどんぴしゃりなのに、娘がいない〜。この冬、もう一度読むのもいいか。 お話は、作った雪だるまをずっと冷蔵庫に隠しておき、「夏に雪だるまを見る会」を思い…

Boy on the brink

絵本『Boy on the Brink』は、夢のお話。午前中おじいちゃんと釣りに行き、その帰りに機関車に遭遇。午後は家族みんなでビーチへピクニック。夕方からカーニバルに出かけ子馬に乗って……。そんな一日を過ごした男の子がその晩見た夢は、はらはらどきどきの冒…

Russell and the Lost Treasure

父の日を前に、書店では父子関係の絵本が目白押し。同時に海賊絵本もわんさかと並んでいた。父と子+海=海賊の公式が成り立つのかも。(ちなみにオレゴン州在住の男性2人が始めた「海賊語を話そうデー」は、9月19日でまだ先のことである。海賊絵本のリス…

Olivia Forms a Band

赤とセピア色の配色*1にさわやかなターコイズ・ブルーが加わった『Olivia Forms a Band』を読む。色合いからして、7月4日米国独立記念日を意識した絵本なんだろう。米国で7月といえば、赤、白、青の三色と花火がつきもの。自分の誕生月でもあり、星条旗よ…

ちいさなこぐまのちいさなボート

先日のジャズ・コンサートで、息子の成長ぶりを振り返り感慨に浸りました。あどけない表情で大きなバリトン・サックスを吹く姿に、幼な子と少年の両方を見た気がします。家でさっそく『ちいさなこぐまのちいさなボート (はじめてブックシリーズ)』を開き、帯…

レイチェルのバラ Rachel's Roses

ご近所のつるバラに目を奪われました。マジェンタ・ピンクのそのバラは木塀に寄り添い、道行く人々に甘い香りを放ちながら夏の訪れを愉しんでいました。そこで読んだのが、『レイチェルのバラ』です。 おばあちゃんからピンクのバラの花束をいただき、レイチ…

芳しい夏の夕べをうたう

なんだか季節はずれなのだが、素敵な詩の絵本なので記しておく。『Summertime Waltz』は、芳しい夏の夕べをうたう詩の絵本である。夕といっても、こちら米国の夏は夜10時ぐらいまで明るいという事情。長いイブニングの楽しい集いは、草の匂いと笑い声に包ま…

夏のひそかな楽しみとなる絵本#10 風に吹かれてお昼寝の絵本

金曜日、久しぶりに義母に会いに行く。フライド・チキン、フルーツ・サラダ、ロールパン、りんごジュース、デザートにレモン・バー……の簡単な食事を持ち合って近くの公園でピクニック。木漏れ日の下、心地よい風の渡る中でおいしい昼食になった。野外で食べ…

クイル賞ノミネート絵本を読む#1 いつもぬいぐるみといっしょの赤ちゃんのお話

『Knuffle Bunny』には、赤ちゃんのいる家庭の小さなドラマがユーモアいっぱいに描かれる。舞台はニューヨーク、ブルックリンの街角。白黒写真で登場する通りや公園は、セサミストリートで目にするおなじみの光景だ。主人公のトリキシーは(きっと)歩き始め…

夏のひそかな楽しみとなる絵本#9 アイリーン・ハース夏絵本3部作

草色の絵本『カーリーおばさんのふしぎなにわ (あかねせかいの本 6)』 勝手にハース夏絵本3部作なんてつけた理由は、この作品を手にしたとき「夏のさわやかさを描かせたらハースが1番なんじゃないか」と感じたことに起因する。表紙も中表紙もページのすべ…