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Crow Call 失われた時間を求めて

第二次世界大戦に従軍していた父親が帰還した。少女リズはほとんど父親のことを知らない。互いに失われた時間を求めて、父娘が親子としての接点を探し始める。 この表紙。一瞬写真かとも思えて、しばし眺めていた。戦争体験のある人々にとって、"Crow Call"…

No! いじめも戦争も根源はいっしょ

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「やめて!」と、表紙の少年が叫んでいる。"No!"で描かれるくすんだ街の光景は、第二次世界大戦時のヨーロッパの街角に見えた。「親愛なる大統領さま……」――冒頭で、ペンを手にした少年が大統領宛てに手紙を書き、封をして投函しようと外に出る。そこで見る戦…

The Enemy パレスチナ和解は永遠の夢か

ホロコーストを通り抜けたユダヤ人なので、選民思想がさらに深まり盲目的になっているのか。親を亡くした子ども、子どもを失った親……憎しみはパレスチナの地に醜く刻まれていく。美しい土地に爆音がとどろき、黒煙が上がり……。世界中に散らばるユダヤ人社会…

なぜ戦争はよくないか

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『Why War Is Never a Good Idea』*1の邦訳『なぜ戦争はよくないか』が出ていた。ガザ地区で起きているイスラエルとパレスチナの報復合戦を目の当たりにする今、まわりは何もできず、人命を救えない無力に愕然とするばかりだ。当事者たちは憎しみに包まれた…

Why? クリスマスの戦争

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ハマスとイスラエル軍の戦闘第一報を聞き、なぜ、クリスマス、ハヌカに戦争*1,*2を? 2008年最後を締めくくる絵本は『Why?』だ。戦争の愚かさを描く、ロシア人画家による文字なし絵本である。 穏やかなある日、カエルは石に腰かけ麗しい白い花を手に持ち観賞…

おもいでのクリスマスツリー

『おもいでのクリスマスツリー』は、毎年持ち回りで村のクリスマスツリーを用意するという米国アパラチア地方の一村を背景に、力強く生きる母子を描く。 時代は第一次世界大戦勃発のころ。出兵した父親を待つ娘と母親が貧しくとも凛と背筋を伸ばし生きる姿が…

パリのおばあさんの物語

人生四十路を迎えたあたりから、ぼんやりと老後の暮らしを思い描くようになった。どこで暮らそうか、何をしようか。移住が当たり前の米国にいると、家族編成によって家のサイズを変え移り住む習慣が、いつの間にか自分の中でも普通に感じられるから怖い。 古…

戦争ゲーム

タイトル『戦争ゲーム』のように、青年たちはまるでサッカーの試合に赴くような気持ちで出征したに違いない。英国を上げての愛国運動に踊らされ、第一次世界大戦の前線に送り出されたウィル、フレディ、ビリー、レイシー。4青年の悲喜は田舎から戦地に向かう…

Why War is Never a Good Idea 戦争をしてはいけない理由

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「平和ボケ」とは、戦争はいけないとわかっていても暮らしの中で自分のものとして実感できないことか。だとしたら絵本『Why War Is Never a Good Idea』(邦訳『なぜ戦争はよくないか』)を読むといい。戦争が人と自然をどう踏みにじるのか、子どもにわかり…

One Thousand Tracings 戦禍を被ったドイツに靴を贈り続けたある家族の物語

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祖父母宅の屋根裏部屋で見つけた、何千もの足型。新聞紙や便箋から切り抜かれた型には、色あせたインクで名前などが記されている。いったい何のためにこれだけの足型が取られたのだろう。大小さまざまな足型が語る秘密を知った作者は、第二次大戦後、荒廃し…

Wind Flyers アフリカ系米国人だけで構成された米国空軍第332戦隊を描く絵本

『Wind Flyers』は歴史ノンフィクション絵本なのだが、史実を細かく伝えるよりは、登場人物の心情をロマンといっしょに描く詩的な絵本だ。大空を飛ぶ夢を実現した少年の姿が、第332戦隊に所属したおじさんの青少年期と重ねられる。 巻末に歴史背景の解説があ…

ジンジャーブレッドハウス、チョコレートチップクッキー、The Silver Donkey 銀のロバ

学校でジンジャーブレッドハウスを作り、明日が今年最後の授業日だと気づく。帰宅後、大慌てで先生たちへのクッキー準備に取りかかった。息子ご指名レシピでのチョコレートチップクッキーだったのだが、このドウがまたいい! 子どもの好きなクッキーレシピは…

A World War II Story: Across the Blue Pacific 青い太平洋をこえて 第二次世界大戦のある物語

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十一月に入り、各教室・廊下ブルテンボードの飾りつけも変わる。一年生のクラスに、十一日「復員軍人の日(Veterans Day)」に合わせ、赤いケシの花をあしらった紙皿工作と一編の詩が掲げてあった。流した血の色を象徴するケシは、国境と時を越え、国籍・歴…

A PLACE WHERE SUNFLOWERS GROW 砂漠に咲いたひまわり

ハロウィンもまじかという頃、庭には夏の名残よろしくまだひまわりが揺れている。深まる秋の中、黄色い大輪をずっと目にしていたからかな。『A Place Where Sunflowers Grow: Sabaku Ni Saita Himawari』の記録がずいぶんと遅れてしまった。 なぜ、砂漠の荒…

Christmas in the Trenches 戦場のクリスマス

1914年、第一次世界大戦の勃発は、クリスマスまでに終結するだろうという多くの予想に反し長引いていた。凍てつく戦場でクリスマスを迎えた独英兵士たちが、聖夜をどう過ごしたのか。すでによく知られた史実だと思っていたところ、意外にも息子の記憶には残…

I AM I われは王

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『I Am I (Neal Porter Books)』の表紙と裏表紙には、少年二人の叫ぶ姿がある。「I AM I」――。まるで自分が王のごとく、二人は川を境界線に力の示し合いをした。これでもか、これでもかと競えば競うほど大地は荒廃し、悲しさが少年たちを包み込む。 争い、報…

The Journey That Saved Curious George: The True Wartime Escape of Margret and H. A. Rey ひとまねこざるを救った旅

親しみあふれる存在に、知られざる過去があるとしたら――。『The Journey That Saved Curious George: The True Wartime Escape of Margret and H.A. Rey』が出版されたとき、純米国製だと思っていたおさるのジョージに激動のヨーロッパを生き延びた背景のあ…

せかいでいちばんつよい国

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『せかいでいちばんつよい国』は、ずっと気になっていた絵本。『ぞうのエルマー〈1〉ぞうのエルマー (ぞうのエルマー (1))』シリーズの作者だし、邦訳タイトルが原書『The Conquerors』にはないインパクトを生み出していて興味をそそられた。 「むかし、大き…

にじのうた

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カーミットの歌う「The Rainbow Connection(The Muppet Show)」に魅せられている。メロディーを弾くと子どもの顔が浮かび、普段はあまり意識していない夢とか希望とか平和とかをまっすぐに見つめる気持ちになれるのだった。音楽の魔法。 虹をテーマにした絵…

グラフィックで追う、バスラ侵攻と蔵書保護

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紹介していただいた翌日、即手にできたグラフィック・ノベルズ『Alia's Mission: Saving the Books of Iraq』*1だったが、息子といっしょにゆっくりと読む時間がなかなか持てずにいた。 本書は漫画のようなコマ割りスタイルで、イラク戦時下でのバスラ中央図…

戦争と本

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土曜日の午後は、友人のビーチハウスで鮭のバーベキュー。子連れではなかったので、短い時間だったけれどゆっくりさせてもらった。この海岸沿いの別荘は、1920年来のものだそう。紅葉と海岸風景が美しい。ため息。わたし以外の5人はみな独身で若いので、会…

ニューヨークを支えた消防艇ハーヴィ

赤みがかったピンクが基調の表紙は、遠くからでも目を引いた。タイトルは、『FIREBOAT: The Heroic Adventures of the John J. Harvey (Boston Globe-Horn Book Awards (Awards))』(邦訳『しょうぼうていハーヴィ ニューヨークをまもる』)。 手にしてみる…

言葉の力と戦争

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『おとなになれなかった弟たちに…』は、中学1年生の教科書で出会った。ひもじさに負け弟のミルクを隠れて飲んでしまう少年(作者)の、戦時回想記である。 幾度となく頭にイメージの浮かぶ場面――。空襲が激しくなってきたので疎開の相談をしようと親戚を訪…