Young Zeus 少年ゼウスのものがたり

神話の絵本化は、創作上、もっとも難しい範ちゅうにあると思う。にもかかわらず"Young Zeus"は、奇想天外、支離滅裂なお話を、子どもの好きそうな冒険ものにうまくて仕立てていた。 ギリシャ神話は遠い昔、読んだけれど、話のすじはほとんど覚えていない。よ…

Lola Loves Stories ものがたりのマジカル・パワー

"Lola Loves Stories"に描かれる家族は、読書好き。ローラは月曜日から日曜日まで毎日、お父さんとお母さんに絵本を読んでもらい、自分もその世界に入り込む。妖精の本を読んで妖精になり、冒険の本を読んで冒険し、友だちの本を読んでいっしょにままごとを…

Yucky Worms あいすべきミミズくん

"Yucky Worms (Nature Storybooks)"は、庭づくり、畑づくりの前に一読すると楽しい絵本。男の子がおばあちゃんからミミズのことを教えてもらい、ミミズの生態、庭の自然に興味を持ちはじめる。 ミミズが土を肥やすことは知っていても、そのために小さな石や…

A Pig Parade is a Terrible Idea ぶひぶひ ぶたの大行進

作者がコメディアンと知り、なあるほど。実際にありえないきらびやかなブタのパレードを想像させてから、「あるわけないでしょ」とその理由を現実の中から拾い集める。 食べ残しをむさぼるブタの姿は「千と千尋の神隠し」の、あの千尋の両親のように見えた。…

芥川賞 朝吹真理子著『きことわ』――古語復興のこころ意気

慶祝、芥川賞受賞! 新潮社のサイトにて『きことわ』の一部を読んだとき、ひらがなの使い方が古今集など和歌表現に似ている印象を受けた。受賞を伝える記事にあった「流麗な筆致」とは、このことをいうのかもしれない。年が明けて本日、YouTubeで古語復興の…

In the Wild 迫力の動物たち

"In the Wild"は、詩の指導にぴったりかもしれない。大判サイズで、動物たちが見開きページからはみ出しそうな構図で、タイトルのとおり絵本もワイルドだ。こちら側に、今にも迫ってきそうな距離感が効いている。木版画の素朴さに野生味が加わり、アート絵本…

Time with Books 本のある時間

bk1のホームから「TIME with BOOKS 本のある時間」というサイトを見つけ、そちらの「本好き101人の森」に登録してみた。詩歌に関して記す場がないと思っていた矢先で、まさに渡りに船的な出会い。絵本手帖に古典の話はどうかな……と躊躇していたところ…

Up and Down ペンギンとおとこのこの友情ものがたり

本作"Up and Down. Oliver Jeffers"にて、"Lost and Found""How to Catch a Star""The Way Back Home"の4部作完結。 これは、ペンギンと男の子の友情ものがたり。空を飛ぶ野望を抱いたペンギンが、男の子といっしょにさまざまな挑戦を繰りかえす。最後に自…

ぼくがいちばん!

『ぼくがいちばん!』も原書でファンになった絵本。絵を見ているだけで、元気が出てきます。ぜったいおすすめ! でも、レビューには原書で手にすべきと書いていた。 →I'm the Best カラフル! カズンズ・ワールド - 絵本手帖 ぼくがいちばん!作者: ルーシー…

ながいながいよる 

『ながいながいよる (大型絵本)』の原書は、けっこう気に入っていた。春を待つ冬の美しさ、厳しさが描かれ、詩的な世界に引き込まれた。 それでこのほど邦訳がお出まし。岩波さんからで、うれしいな。雰囲気がぴったりだと思う。非常に個人的な見解。 →The L…

運だめし

MacBook Air 11インチ欲しい! 当たるとは思っていないけれど、当選した暁には息子へのプレゼントにしたい。自分のほうは、小型化されるというiPad2と、MSのタブレット登場を待っている。娘の初代iPadを見ていて、使い勝手からいえば、わたしはMSのほう…

The Chicken Thief ニワトリどろぼう

夏からずっと読みたいと思っていた、フランスの絵本。文字なしシリーズの第1弾として米国の出版社から出た。 振りかえってみれば、まるで略奪婚のようなお話。しかし、子どもの絵本なのでもちろん、愉快に和やかに描かれる。キツネがクマの家からニワトリを…

Ollie's Halloween あひるちゃんのハロウィン

かなり遅いレビューだけれども、かわいかったので記録。 小さな存在がコスチューム着込む姿って、かわいいな。"Ollie's Halloween (Gossie & Friends)"は、小さな子どもたちへのハロウィン絵本。シンプルな韻のリズムとあひるたちの行進が、本来なら怖いはず…

2011年コルデコット賞受賞絵本

予想どおり"A Sick Day for Amos McGee"(『エイモスさんがかぜをひくと』)が受賞。たとえばイチローが世紀の逸材のように、こちらも百年に一度出るか出ないかの名作絵本だと感じていた。エイモスさん、おめでとうございます。 ◆をクリックすると、レビュー…

The Boss Baby 赤ちゃんの本質

赤ちゃんはまるで自分がボスのように、パパとママに要求をする。昼も、夜も、相手のことなどおかまいなしに、いつ何時でも。 乳児期のお世話は、ほんとうにたいへんだ。でも同時に自分のことをふりかえってみて、懐かしくもあるのだけれど。息子はよく眠って…

Miss Lina's Ballerinas かわいいバレエ絵本

ピンクのチュチュをまとい、軽やかに踊る小さなバレリーナたち。リナ先生のバレエ教室ではクリスティーナ、エドウィーナ、サブリナ、ジャスティーナ、カトリーナ、ベティーナ、マリーナ、ニーナの8人が、4人2列で息の合ったダンスを披露する。ところがそ…

What About Bear? 仲間はずれ

鮮やかなパステル画に惹かれて"What About Bear? (Goose and Bear Stories)" を開いた。 くまとあひるが仲良く遊んでいるところに、きつねが仲間入り。するとたちまち仲良し関係がぎくしゃくしはじめて……。がたいが大きなくまは、きつねに煙たがられて、仲間…

Everything but the Horse 少女時代のホリー・ホビー

"Everything but the Horse"は、ホリー・ホビーが少女時代を振りかえりエピソードを紹介する絵本。トゥートとパドルで人気を博した水彩画の冴えは、本書でもきらりと光る。 馬に魅せられる人の多い米国にあって、その理由を考えてみた。娘の友だちでも乗馬ク…

Me and You アンソニー・ブラウンの3びきのくま

"Me and You"を読み、久しぶりに「アンソニー・ブラウンの絵本」にお目にかかれた気がした。家族愛を描く傑作としては、『すきですゴリラ (あかねせかいの本 (12))』以来と断言してしまいたいぐらい。それこそ、英国の絵本の魅力がぎゅうぎゅうと詰った秀作…

Little Black Crow 少年のつぶやき

さらりと描いた水彩が、少年の素朴なつぶやきと合い重なり、さわやかな絵本になった。「ぼく」はカラスを見つめ、心に浮かぶまま問いかける。どこに行くの? 誰に会うの? 君も怒ったりする? どうやって眠るの? こんな風に次から次へと、素直に、ことばの…

Switching on the Moon: A Very First Book of Bedtime Poems おやすみのポエム

"Switching on the Moon: A Very First Book of Bedtime Poems"は、けっこう分厚くて大きな詩集。おやすみ前のベッドで開くために編まれた。マザー・グースの童謡があったり、有名作家の詩があったりで楽しい。ファージョンの詩はこれ。 The Night Will Neve…

The Carnival of the Aniamls 動物の謝肉祭

"The Carnival of the Animals"は、詩人プレルツキーが「動物の謝肉祭」をテーマに手がけた詩の絵本。CD付きなので楽曲といっしょに楽しめる。 ニューヨーク・シュタイナー学校の音楽部長によるあとがきが興味深かった。1886年に誕生して以来、子ども…

Bedtime Bunnies うさぎたちの冬ものがたり

卯年にちなんで、うさぎの絵本。"Bedtime Bunnies"は、擬態語・擬音語だけでうさぎたちの心象を表現する。 うさぎの兄弟姉妹が冬を迎え、雪の夜をどう過ごすのか。外遊びから戻り、夕食、お風呂。彼らの立てる「ぴょん」だったり「ごくん」「かりっ」「ちゅ…

新春、お節

あけましておめでとうございます。本年も絵本手帖をどうぞよろしくお願いいたします。 今年は娘とともに年女になります。ものごとを見きわめ、時間を大切に使う一年を心がけようと思います。 新春は今年もお節とともに明けました。 でも残念ながら、今年は反…

年末雑感

水曜日に旅行から帰宅。子どもたちはスキー三昧、わたしは読書三昧で大満足。しかしながら、例年なら家に閉じこもって掃除していた期間をレクリエーションに当ててしまい、今年は掃除がはかどっていない。 遅ればせながら、お節準備開始。口取り、酢の物をほ…

Mimi's Dada Catifesto ダダイズムと遊ぶ猫

ダダイズムって、何だろう? 定義を読み、それなりに理解はしているつもりでも、このアートフォームを身を持って体験したことはない。その定義だが、広辞苑によると「ダダはあえて無意味な語を選んだもの。(……たしか、無造作に開いた辞書のページにナイフを…

Kubla Khan: The Emperor of Everything

"Kubla Khan: The Emperor of Everything"(予定)Kubla Khan: The Emperor of Everything作者: Kathleen Krull,Robert Byrd出版社/メーカー: Viking Books for Young Readers発売日: 2010/09/16メディア: ハードカバーこの商品を含むブログ (1件) を見る

The Extraordinary Mark Twain According to Susy

"The Extraordinary Mark Twain According to Susy"(予定)The Extraordinary Mark Twain According to Susy作者: Barbara Kerley,Edwin Fotheringham出版社/メーカー: Scholastic Pr発売日: 2010/01/01メディア: ハードカバーこの商品を含むブログ (1件) …

アドベント絵本をふりかえって

最後の3日間はまとめて開く結果に終わったけれど、すごく楽しい計画だった。来年もクリスマス・アクティビティのひとつに加えようと思う。 で、本来なら初日にすべきだった「絵本を包む布24枚」と「クリスマス・バッグ」の記念撮影をアップ。クリスマスお…

アドベント絵本 第22、23、24日目 『そりぬすみ大さくせん』の読み語り

→クリスマス絵本24冊を布で包むアドベントの過ごし方 - 絵本手帖 さいごの3日分はばたばたしていて、クリスマスの朝に開いた。『そりぬすみ大さくせん (児童図書館・絵本の部屋)』『くろうまブランキー』と『こねこのクリスマス (Forest books)』の3冊。…