いつでも、どこでも、調べにのって

 我が家のこの春一番のニュースは、息子の進む中学校が決まったことだろうか。希望どおり、音楽プログラムの充実した公立中学校に入学することになった。現在5年生の彼は、9月から新中学生。6年生から8年生までの3年間を、音楽三昧で過ごすことが保証されたのだ。もう一校は、語学と英才プログラムを売りにしている中学校だった。でも、うちの場合、音楽がなければ始まらない。決定はくじ引きだったので、3月は祈るような気持ちで過ごした。近所の仲よし友だちもみな同じ中学校とわかり、この事実も心にぱ〜っと花を咲かせてくれた。
 さすが、芸術至上主義を受け継ぐ風土と言っていい。この中学に限らず、オーケストラやジャズバンドのある学校には普通、音楽の授業は毎日あり、どの生徒もいずれかを選択して指導を受けることになる。わたしも、こんな環境で中・高校時代を過ごしたかった。彼は一応、小学校のプログラムでは、バイオリンとサクソフォンを演奏している。中学では多分、友だちの多いジャズバンドを選択するのかな……と思いきや、自分から進んでオーケストラを選んだので親としては驚きだった。何しろバイオリンの練習は怠け者の極致を行っているので。
 先月末、その中学校でオーケストラのオーディションを受け、4つあるオーケストラのうち、晴れてジュニア・オーケストラ入りが許可された。今回オーディションを受けた新6年生はレベルが高いそうで、いつもなら学年末に演奏する曲目をクリスマスコンサートで演奏できそうだと、担当の先生はおっしゃっていた。演奏旅行ではボストンに行くとのこと、さっそく「レッドソックスのゲームが見たい!」と息子は大はしゃぎである。ジャズのほうは放課後にクラブ活動があるので、そっちの方で楽しめるね。
 というわけで、彼のために読もうと思っていたのが『オーケストラの105人』という絵本だ。ちょっと寒い季節向きの絵本だけれど、音楽の楽しみはもちろん年中無休。宿題を終え、眠そうにしていたけれど誘ってみたら「読みたい!」の反応だったので、ベッドのかたわらでページを開いた。絵本にはオーケストラを形成する105人の団員たちの、演奏会に向かうまでのドキュメントがユーモラスに描かれる。こと細かに、何を、どうするのか、の説明付きで。シャワーを浴びて、服を着て、みな会場に急ぐ。ひげのおじさん、黒髪の女の人、稲妻の模様をした白髪の男の人……気が付くと105人のさまざまな表情やしぐさを追っている。オーケストラの音色は、たくさんの個性からできあがっているんだね。イラストが『はなをくんくん (世界傑作絵本シリーズ)』のマーク・サイモントで、これは意外だった。こういう『ニューヨーカー』誌みたいなイラストも(もちろんプロだから)描けるのだ。
 息子の最初のバイオリンの先生はロシア人(クロアチア人)の女性の先生で、オーケストラでも演奏をしていた。息子は彼女のことを思い出していたかもしれない。いつでも、どこでも、音楽の調べに囲まれた、豊かな人生を送ってほしいなと願ってしまう。(asukab)

オーケストラの105人

オーケストラの105人