春から夏に、あおむし3部作(2)ふしぎなあおむしのお話

 イマジネーションで遊ぶとなると、不思議なあおむしのお話『クレリア―えだのうえでおきたできごと』になる。それは、ある春の夕方のこと。木の上で一眠りしようとしていたクレリアのところにクモがやってきて、「ここ、きもちよさそうだね。ぼくにもやすませてくれない?」。バッタ、てんとう虫、チョウ、コガネムシと次々にやってくる虫たちから「やすませて」と頼まれるたび、クレリアは「にょろ」と体を縮ませて居場所を作ってあげた。でも、最後には……。
 クレリアはいったいどこに行っちゃったの?――読後に浮かぶ素朴な疑問は、子どものイマジネーションを永遠にする。大人は心優しいクレリアの自己犠牲の絵本とも思うかもしれないけれど、子どもはクレリアの行方が気になってしかたがないだろう。クレリア探しは一生続くかもしれなくて、それがこの絵本の魔法。作中に登場するのと同じクレリアのポスターが付いてくるので、子どもはますますクレリア探しに夢中になってしまう。娘に本物のあおむしを見せてくれたお友だちの名前がクレアで、クレリアとほどよく語呂合わせになることもあり、彼女はずいぶんあおむしに魅せられていたっけ。
「にょろ」のテンポ、クレリアと仲間たちのデフォルメされたかわいい顔が、ぼこぼこした紙に描かれたイラストのほっこりした風合いと調和していてとっても優しい。(asukab)

クレリア―えだのうえでおきたできごと

クレリア―えだのうえでおきたできごと