耳を澄ませば、鳥の歌

 茂る緑が濃くなり始めると、鳥たちのおしゃべりもにぎやかになる。子どもを学校に送る朝のお散歩は、唯一彼らの楽園を確かめるひととき。早起きさんのことをearly bird(s)と呼ぶけれど、そうならなくちゃと寝坊すけの自分に言い聞かせた。森の匂いと鳥の声に包まれたら、深呼吸するだけで命が洗われるもの。
 『ひとあしひとあし―なんでもはかれるしゃくとりむしのはなし』は、たくさんの珍しい鳥にお目にかかれる絵本。主人公は小さなシャクトリ虫だけれど、分類はあえて鳥にした――こまどり、フラミンゴ、オオハシ、サギ、キジ、ハチドリ、ナイチンゲールらが総出演。こまどりに食べられそうになったシャクトリ虫が、「ぼくは便利なんだよ。いろんなものの長さをはかるんだ」と自己存在を主張して、こまどりのしっぽの長さを測ってあげると……。こまどりは感激して、長さを測って欲しそうなほかの鳥たちのところにシャクトリ虫を連れて行った。
 最後のエピソードがすごくいい。ナイチンゲールから「わたしの歌を測ってごらん」と挑戦されたシャクトリ虫が思いついた手段は、賢くて、同時に夢もあり、広がりのある終わり方に結びついている。歌を測るってどんなことだろう――そんなことに思いを馳せるのは、絵本ならではの遊びだろう。小学校では長さの単元で教材としてよく使われる絵本だけれど、こうやって物語の中の無限性を感じるのもいいな。こすり絵のコラージュが草むらと鳥たちを美しく表現し、シャクトリ虫の小さな存在をたたえている。
 米国でのこまどりの名称はロビン。庭に遊びにくると娘は「おなかの赤い鳥!」と喜び、友だちになろうとしてか、いつもそーっと近づいて行き、逃げられてしまう。(asukab)

Inch by Inch

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