花のABC

 たくさんの色、いろいろな形、甘い香りがしてミツバチや蝶々となかよし――子どもが好きにならないはずがない「花」。春になり、たんぽぽ、クロッカス、すみれ、水仙、チューリップ、さくら、椿、はなみずき、今はあやめ……、たくさんの花を目にしていた娘に、『アリスンの百日草』(原書『Alison's Zinnia』)は魅力たっぷりの絵本だった。しかもABC絵本である。邦訳版は英文併記なので、うちのような環境では有用でうれしい。
 Aは、アリスンがアマリリス(Amaryllis)をベロルのために手に入れるところから始まる。Bが頭文字のベロルはベゴニア(Begonia)をクリスタルのために買い、Cが頭文字のクリスタルは菊(Chrysanthemum)をドーンのために……、とABCの順にすべてがつながっていき、最後はZが頭文字のジーナがアリスンのために百日草(Zinnia)を調べてあげるところで冒頭につながる。まるで花冠のように美しい作品だ。といっても花の描かれ方は繊細というより、力強い。自己主張する花の姿がそこにある。登場する女の子たちはみな作者の知り合いばかりという、とてもプライベートな絵本であり、作者自身も作中に登場している。
 ページごと丁寧に大きく描かれる花は、子どもにとってもわかりやすい。親子共々、花の名前をたくさん覚えられそう。花に囲まれた生活って、豊かでいいね。一生忘れないで欲しいな。わたし自身、余裕がなくてそんな生活からは遠のいてしまっているけれど、いつも花を生け、香をたいていた父を思い出し、その志が娘に伝わるといいな……と願う。(asukab) 

  • 頭韻を踏んでいるので、原書には妙味が生まれる

Alison's Zinnia

Alison's Zinnia