爆笑、ある猫の悪たれぶり

 久々に涙を流して笑ってしまった。『あくたれラルフ』である。息子のバイオリンの練習中に傍らでこの始末だったから、もちろん昨晩の彼のリクエストはこの絵本だった。ジャック・ガントスという名前は、米国の小学生であれば、あちらこちらでよく聞く名前だ。たくさんの児童書を出している著名作家なので、絵本となれば注目せずにはいられなかった。
 タイトルと表紙から察することができるように、これは一匹のいたずら猫の話。そのいたずらが度を越しているので、悪たれなどと呼ばれている。イラストが最高に笑わせてくれる。やっていることもそうだが、その表情がまさに「悪たれ」で、けれどもなぜか憎めない。でも、人生そうは問屋が卸さなかった。堪忍袋の緒が切れた飼い主家族は、ついにラルフをサーカスに置き去りにしてしまうのだ。ここからのラルフは、人生の辛酸をなめることになる。
 このサーカスの人々が愉快で、わたしは石井桃子さんの訳にしびれてしまった。「うでっぷしのつよい あんちゃん」「おい わけぇの、ここじゃ、だれでもみんな はたらくんだ」……意気のいい表現が場面にぴったりで泣けてくる。瀬田貞二さんの訳にもこういう表現が多くて、いつも魅せられる。何と言うか勢いがあり、艶のある表現だなあと思う。
 息子の好きそうな絵本だと思っていたけれど、その通り。「絵がおもしろい。僕もこういう絵、描くから」と満足していた。うちにも、猫ちゃんはいたしね。近所にもたくさん住んでいるから、見かけるたびにラルフの悪たれぶりが目に浮かんできそうだ。英語では、たくさんシリーズが出ていて驚いた。(asukab)

Rotten Ralph

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