四季の絵本手帖『もしゃもしゃマクレリーおさんぽにいく』

もしゃもしゃマクレリー おさんぽにゆく

もしゃもしゃマクレリー おさんぽにゆく

 軽快なリズムが体感できる、個性豊かな犬たちのお散歩道中記ともいえる絵本です。ドナルドさんちのテリア犬マクレリーがお散歩に出かけると、次々に仲間の犬たちがついてきます。おすもうモース、ぶち犬ポッツ、ほっそりおやせのマロニー、長いおなかのシュニッツェル――ぴったりのニックネームを持つ犬たちはおすまし顔でマクレリーの後に続きますが、みんな大のお散歩好きであることに間違いはありません。犬たちの心弾む一歩一歩はしっぽや鼻の先だけがのぞく構図のおもしろさに表れ、子どもは繰り返し登場する「マクレリーとおさんぽだ」の一節に乗り一気に気分を盛り上げます。
 そんな道中で登場するのが、近所では鳴り物入りのどら猫クローです。場面が急展開するこのページは、読み手の演出のしがいがあるところでしょう。子どもはクローの迫力の表情に思わず息を止めて、その後のなりゆきに想像を巡らせます。動物たちの小さなドラマはまるで撮影カメラの早送りのように描かれ、最後に訪れる安堵感は子どもをゆったりとお話の余韻に浸らせます。
 お散歩は、自然と交わるかっこうの機会です。毎日同じ道でも、毎日違う新鮮な発見があることでしょう。この次のお散歩では、自分と同じように風の匂いや温度、草花、小鳥のさえずり、柔らかな日差しを楽しむ犬たちの存在が、とりわけ気になってしまうかもしれません。(asukab)