四季の絵本手帖『おかあさんだいすき』

おかあさんだいすき (岩波の子どもの本 (5))

おかあさんだいすき (岩波の子どもの本 (5))

 お母さんを思う子どもの気持ちを描くお話が2編収録された絵本です。お母さん、お父さん、家族のうれしそうな顔を見ることは、子どもにとって大きな喜びです。『おかあさんのたんじょう日』は、母親の誕生日に何を贈ろうか思案する男の子のお話です。
 お母さんの誕生日を迎え、ダニーは贈り物をしたいのですが、何にすればいいのかわかりません。贈り物を探す途中で出会う動物たちに何がいいか尋ねてみると、彼らは生活を支える心のこもったものを提案してくれました。めんどりは産みたてのたまご、がちょうは枕を作る羽、やぎはチーズを作る乳、ひつじは毛布を作る毛、めうしは牛乳――動物たちの申し出に、子どもの心はダニーと同じようにあたたまったことでしょう。でも、残念ながらそれらはすでに家にあるものばかりだったので、ダニーはくまに知恵を貸してもらおうとひとり森を訪ねることにします。テンポも雰囲気もガラリと変わるこのページ以降、子どもはダニーの行方を一心に見守ることになります。
 くまの提案は、お金では買えないそれはすてきなものでした。愛する我が子から世界一の贈り物をされたお母さんは、世界で一番の幸せを味わいました。誰もが納得する一番の贈り物に、子どももダニーといっしょに幸福と安らぎに包まれます。作中の会話は子どもが何度も耳を傾けたくなるほどあたたかいやりとりに満ち、お母さんを思う気持ちが率直に表現されています。(asukab)