どろんここぶたの1日

 近くに流れている小川のせいなのか、何なのか、息子は泥だらけになって帰ってくることが多い。友だちの服はそれほどでもないのに、彼の服の汚れ方といったら……。泥の中で転んだことが明らかな泥まみれぶり+笑顔で現れるので、楽しいんだろうなあとは思うのだけど洗濯は大変だ。日曜日の昼も、そんな感じで帰ってきた。友だちに服を着たまま全身をホースで水洗いしてもらい、ひゃあ〜ひゃあ〜喜んでいる。
 彼の泥好きは、『どろんここぶた (ミセスこどもの本)』に登場するこぶたと同じである。浸かっていれば夢見心地の泥を掃除され怒って家出をするこぶたの絵本が、息子の泥好きをエスカレートさせた?とも思えてしまう。泥と間違えてコンクリートに浸かってしまったこぶたを、小さな息子は随分と心配していたっけ。
 午後は甥っ子の高校卒業バーベキューパーティーがあり、郊外にある義妹の家へ。同じく卒業するガールフレンドとの合同パーティーだった。彼女は地元の州立大へ、甥は隣州の州立大へと進む。聞くところによれば、卒業式前の週末は、高校シニアのいる家はどこも卒業パーティーで、みな1日に何件もはしごをするそうだ。義妹夫婦も昨夜は2件招かれたと言っていた。卒業生の親って、大変だ〜。
 ふと目をやると、息子はここでも日陰のペトペトと湿った泥土のあたりを歩き回り、「おっとっと〜」とわざとらしく転ぼうとしているので、そうはさせまいと慌ててストップをかけた。この場でどろんここぶたはないよね。
 それにしても、郊外の家って余裕があって整っている。自然の緑に囲まれ、広い庭にはテニスコート、トランポリン、ジャクージ、手入れの行き届いた花壇……。当地の夏は短いし近くに湖があるにもかかわらず、プールのある家も多い。義妹一家は、別にお金持ちというわけじゃない。普通の家庭である。そこから感じられる、こういう「物」の豊かさは、これが普通だからという感覚なんだろう。米国は住む場所を選び、生活のスタイルがある程度決まる国でもあるので、ガレージが4つや5つある家に住みたいと思えば、そういう生活を目指して努力するということか。
 お土産に、大量のポテトサラダと、何と!直径1.5メートルぐらいの小さな円形トランポリンをいただいた。庭の一角には甥がウェイクボード(水上サーフボードみたいなもの。モーターボートで引いてもらいながら、空中で宙返りしたりするスポーツ)のフリップ練習で使う直径5メートルのトランポリンがあり、子どもたちは着くなり食べることも忘れ、水着姿でこのトランポリンとジャクージを交互に楽しんでいた。昨日触れたトランポリンの話が翌日現実のものになるとは、ビックリ。小さいけれど、これでベッドが救われるかもしれない。
 最後に。「どろんここぶたは泥に浸かりながら何を考えていると思う?」と娘に尋ねたら、しばらく沈黙の後、「『毎日、泥んこに入っていたいなあ』って思っている」との答えだった。そうかあ、とてつもない夢を思い描くよりも、日々のことを考えているんだね。(asukab)

Small Pig (I Can Read Level 2)

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