四季の絵本手帖『はしれかもつたちのぎょうれつ』

Freight Train

Freight Train

 小さな子どもは、動きのある対象が大好きです。そう考えると、乗り物は動くから子どもを魅了するのでしょう。自動車、汽車、船、飛行機……どれも、子どものおもちゃには欠かせません。もし、虹のように美しい列車が走っていたとしたら、どうでしょう。この絵本の中では、7色の車両がずっと走り続けています。
 後尾を行くのは赤い車掌車、次はオレンジ色のタンク車、その前は鉱石を積んだ黄色の底開き車、続いて緑の家畜輸送車、青い無蓋車、紫の有蓋車、そして黒い炭水車に連結された先頭にはもくもくと煙を上げる蒸気機関車が走ります。これだけの種類が紹介されるだけでも子どもの心はときめくことでしょう。ところが、作品ではさらに列車の行列がスピードを上げて光のように溶け合うのですから、それはまさに夢見心地です。ページには簡潔な説明と目を見張る美しいイラストだけ――この2つが調えば、あとはページを開く子どもの感性に全てが委ねられます。7色の行列は、トンネルを抜け、鉄橋を渡り、大都会を走り去り、夜も昼も走り続け、終点にはまだ着いていません。
 どのページにも、見開きいっぱい左から右へまっすぐな線路が伸び、気持ちよく貨物列車を導きます。色の概念の楽しさ、さまざまな種類の貨車、シンプルな言葉とグラフィック・デザインの美しさなど、小さな機関車ファンを魅了するには十分過ぎるほどの内容を乗せ、列車はイマジネーションの世界を走り抜けます。(asukab)