四季の絵本手帖『ちびゴリラのちびちび』

ちびゴリラのちびちび (ほるぷ出版の大きな絵本)

ちびゴリラのちびちび (ほるぷ出版の大きな絵本)

 ゴリラのちびちびは、名前のとおりとても小さなゴリラです。「みんな、ちびちびがだいすきでした」の一言が物語るように、小さな体には家族や友だちみんなからもらった愛がたくさんつまっていました。お母さん、お父さん、おばあさん、おじいさん、みんなにかわいがられるちびちびの何と幸せそうなことでしょう。抑えた色合いで描かれる笑顔はまわりに幸福をもたらし、子どもも温もりの中に浸り込んでいます。
 子どもは「好き」という魔法の言葉を聞いて育ちます。抱っこされたり、花を差しだしたり、つるにぶらさがったりといった無邪気なちびちびの姿には、魔法の言葉を受け取っているからこそ与えることができる個性が備わっているようです。
 ひとりの小さな存在に愛情を注ぐ行為は、言うまでもなく子どもを育てる原点です。家族だけでなく、ジャングルのコミュニティー全体が小さな者の成長を見守る姿は、ふれあいが人を育てるという人間、家族、地域の存在と意義をも示してくれます。こうしてたくさんの愛を受けたちびちびは、どう成長するのでしょう。ある日、何かが起こりはじめる後半は、子どももいっしょにお祝いしたい気持ちに駆られるかもしれません。
 小さな頃に愛されることは、豊かな人間性の種まきをしてもらうことです。ちびちびと、ちびちびを囲む動物たちが、大切なメッセージを人間に送り続けます。(asukab)