四季の絵本手帖『ガンピーさんのふなあそび』

ガンピーさんのふなあそび (ほるぷ出版の大きな絵本)

ガンピーさんのふなあそび (ほるぷ出版の大きな絵本)

 ガンピーさんの家は、川のほとりにあります。よく晴れた日にガンピーさんがのんびり流れにさおさせば、目にした人がみな川下りに心ひかれることは自然なことでしょう。「乗せて」とお願いしたのは、女の子と男の子、うさぎ、ねこ……まだまだいます。頼まれるごとに、子どもたちには「けんかをしなけりゃ」、うさぎには「とんだりはねたりしなけりゃ」、ねこには「うさぎをおいかけたりしなけりゃ」……という条件つきで、ガンピーさんはみんなを乗せてあげました。
 のどかな田園地帯を下る中、左ページにはセピア色のペン画による舟の様子、右ページには彩色された動物たちの大きなポートレートが示され、蛇行したり、柳の木の下を通ったり、橋の下をくぐりぬけたりしながら進む舟のイメージと、仲間たちの個性がほのぼのと伝わります。夏の陽ざしが木々の葉をくすぐる中、川風はページのこちらにも渡ってくるかのようです。
 やぎが乗った後に起きるできごとは、ゆっくり流れていた「静」の時間を、一瞬「動」に変えるクライマックスです。静かにしているという条件は、子どもや動物たちにしてみれば本能に反する約束ごとでした。連鎖反応で大騒ぎとなる舟の様子は上質の喜劇のようで、予想がついても観客である読者は自然に笑みをこぼします。色鉛筆とペンを併用した柔らかなイラストはガンピーさんのおおらかで優しい人間性と重なり、最後の一言とともに心を和ませてくれます。(asukab)