四季の絵本手帖『だめよ、デイビッド』

だめよ、デイビッド (児童図書館・絵本の部屋)

だめよ、デイビッド (児童図書館・絵本の部屋)

 
 親として「だめ」という否定表現の多用は避けたいけれど、実際「だめ」の一言ほどものごとの判断を示すために効果的な言葉はありません――。そんなメッセージが込められた絵本の主人公はデイビッド。幼少期の作者自身です。5歳のときの自作品を再現させたという絵本は、いたずらパワー全開の形を取りながら子どもの心をとらえて離しません。
 壁に落書き、泥だらけで家に入り込み、遊び食べをする……どのページのどの表現も笑いなくしては読み進められないほど、デイビッドは無邪気な子どもらしさに満ちています。普段やってはいけないと言われていることを楽しみながら何のためらいもなくこなしてしまう姿に、子どもは共感と憧憬を抱くことでしょう。特に男の子は、自分と同じだと喜ばずにはいられないかもしれません。落書き調の伸びやかな筆運びで描かれる悲喜こもごもは、子ども時代の懐かしい思い出でもあります。
 いろいろ試してものごとの現象、判断を知ることは、成長過程に不可欠な行為です。数多くの「だめ」のおかげで、デイビッドも成長できました。最後のページが示す親の愛情さえあれば、たとえ「だめ」を連発する毎日でも子どもは伸び伸びと育っていくのでしょう。大切なことは、無条件の愛――親子間にこの愛が存在し、家庭が安らぎの場でありさえすれば、子どもは大きな人間に成長していきます。(asukab)