四季の絵本手帖『三びきやぎのがらがらどん』

三びきのやぎのがらがらどん (世界傑作絵本シリーズ)

三びきのやぎのがらがらどん (世界傑作絵本シリーズ)

 3匹のヤギとトロルという化け物が登場する北欧民話です。大中小と大きさの違うヤギ3匹の名前は、どれもがらがらどんといいました。3匹はある日、山に草を食べに行こうとして、谷川の木橋でトロルに出くわします。
 ぐりぐり目玉に突き出た鼻――橋の下に潜む巨大なトロルは、子どもが一瞬ひるむほど恐怖を与える存在かもしれません。とにかくこの橋を通らなければ山には着けないので、ヤギたちは小さい順に橋を渡って行きます。1番目のヤギ、2番目のヤギはともに、トロルに食べられそうになると、次にやって来るヤギの方が大きいからと理由をつけて窮地を逃れました。となると、3番目のヤギは、どうなるのでしょう。子どもの期待と不安は、一気に最後に残ったヤギに向けられます。恐ろしいトロル対トロルに負けない勇ましさで闘う3番目のヤギ――橋の上でのできごとは迫力の中に描かれます。
 「かたこと かたこと」「がたごと がたごと」「がたんごとん がたんごとん」――橋を渡る音は3匹の特徴を巧みに表し軽快です。山でお腹いっぱいに草を食べたヤギたちの姿はそれまでの恐怖とは対照的にユーモラスで、和やかに終幕を飾ります。民話ならではの魅力が詰まったお話は、「がらがらどん」という愉快な名前とともに、いつまでも子どもの中で生き続けることでしょう。(asukab)