四季の絵本手帖『七ひきのねずみ』

Seven Blind Mice (Caldecott Honor Book)

Seven Blind Mice (Caldecott Honor Book)

 中国のことわざをもとに作られた美しい切り絵の絵本です。赤、緑、黄色、紫、オレンジ、青、白の色をしたねずみたちが1匹ずつ小さな冒険を重ねるお話は、黒の背景に7つの色と構図がさえ、しっとりと風格のある作品に仕上がっています。
 ある日、池に出かけた7匹のねずみたちは不思議なものに出会います。仰天して逃げ帰った彼らは、何ものに遭遇したのか確かめようと1匹ずつ再び池に戻ります。ところが帰ってくるなり、柱、蛇、やり、岩、扇子……と、言っていることがみな異なり、正体はなかなかつかめません。子どもには、この不思議なものの正体は簡単にわかることでしょう。むしろ、この場面ではその謎解きよりも、ねずみたちの勘違いぶりと反応がおもしろおかしく思えます。次はどう間違えるのだろうかと、自分なりに想像さえしてしまうのです。
 ねずみたちの顔に表情は描かれませんが、しっぽの流れ方や体の向き、角度から7匹の好奇、驚嘆、動揺、不可解といった様子が手に取るように伝わり、一種の無言劇を連想させます。切り絵の芸術性が存分に発揮されている証拠でしょう。
 最後の白ねずみの行動は人生の教訓を視覚で描き、作品のメッセージをわかりやすく示します。子どもにとり、これからの長い人生、ねずみたちの教えに感謝する日がきっとあることでしょう。部分だけを見るか、全体を見るか、7匹の体験は貴重な学びになります。(asukab)