四季の絵本手帖『七ひきのねずみ』
- 夏の13ページ 七ひきのねずみ
Seven Blind Mice (Caldecott Honor Book)
- 作者: Ed Young
- 出版社/メーカー: Philomel Books
- 発売日: 1992/04/01
- メディア: ハードカバー
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ある日、池に出かけた7匹のねずみたちは不思議なものに出会います。仰天して逃げ帰った彼らは、何ものに遭遇したのか確かめようと1匹ずつ再び池に戻ります。ところが帰ってくるなり、柱、蛇、やり、岩、扇子……と、言っていることがみな異なり、正体はなかなかつかめません。子どもには、この不思議なものの正体は簡単にわかることでしょう。むしろ、この場面ではその謎解きよりも、ねずみたちの勘違いぶりと反応がおもしろおかしく思えます。次はどう間違えるのだろうかと、自分なりに想像さえしてしまうのです。
ねずみたちの顔に表情は描かれませんが、しっぽの流れ方や体の向き、角度から7匹の好奇、驚嘆、動揺、不可解といった様子が手に取るように伝わり、一種の無言劇を連想させます。切り絵の芸術性が存分に発揮されている証拠でしょう。
最後の白ねずみの行動は人生の教訓を視覚で描き、作品のメッセージをわかりやすく示します。子どもにとり、これからの長い人生、ねずみたちの教えに感謝する日がきっとあることでしょう。部分だけを見るか、全体を見るか、7匹の体験は貴重な学びになります。(asukab)