四季の絵本手帖『アンディとらいおん』

アンディとらいおん (世界傑作絵本シリーズ)

アンディとらいおん (世界傑作絵本シリーズ)

 図書館でライオンの本を借りてからというもの、アンディは食事の最中でさえライオンの本に読みふけっています。何かに熱中するときほど、満足感の味わえるときはありません。子どもにもその気持ちが伝わるのでしょう。まわりには見向きもせずアンディが本に没頭する姿は、子どもにすらライオンに興味を抱かせてしまうほどです。
 それほどライオンが好きだったからでしょうか、アンディは次の日、学校に向かう途中で本物のライオンに遭遇します。そういえばお父さんの読んでいた新聞にサーカスからライオンが逃げ出した記事が載っていましたが、アンディにはそんなことを知るよしもありません。アンディもライオンもお互い大慌てで逃げ出そうとしましたが、実はライオンにはサーカスを抜け出してきた理由がありました。副題は「しんせつを わすれなかった おはなし」とあり、その後の心の通った交流は、ライオンに抱かれているような安らぎとともに描かれます。こんなに大きな友だちがいたら、本当にすてきです。
 アンディの生活、家族とのやりとりには少年らしい無垢なしぐさが表れ、時代性の感じられる古い絵本であるにも関わらず永遠の少年像を示します。冒頭と帰結の図書館に向かうアンディの後ろ姿が、お話の奥行きをぐんと広くしています。ライオンの存在は子どもにとり、憧れとなることでしょう。(asukab)