お誕生日絵本カウントダウン#8

 8日目は、『フランシスとたんじょうび』。フランシス・シリーズは、大人やフランシスの年齢より上の子どもが読んで、さらに楽しめる絵本――。読むたびにそんな思いは強くなる。客観的に子どもの心理に共感できれば、味わいの倍増する作品が揃っているのだ。
 タイトルにあるお誕生日とは、フランシスの妹グローリアのお誕生日のこと。パーティを翌日に控えおかあさんとグローリアは準備に忙しいのに、フランシスはお祝い気分には浸れず、逆に嫉妬の思いを変てこな歌にしたり、遊びにしたりで素知らぬふりをしている。ここでは兄弟姉妹ならではの確執があちらこちらに。そういえばあったなあ……、わたしにも。
 バケツとシャベルを無くしてしまった妹を恨む気持ちはまだ残っているものの、やっぱりお祝いの仲間入りをしたいフランシスは、おかあさんから2回分のお小遣いをもらってプレゼントを買いに行く。「グローリアに プレゼントあげるなんて いいおねえさんね」……とほめるおかあさんは、すべてをお見通しの賢い人である。
 脇役のおとうさん、友だちのアルバート、アイダなど、ホームドラマには欠かせないキャラクターたちがフランシスの子ども心をユーモアといっしょに映し出す。フランシスがプレゼントの風船ガムを結局全部、口に放り込んでしまう場面は、おとうさんの何気ない反応の仕方がいい。せっかく「おねえさん」らしくふるまえたのに、妹やお小遣いのことを考えていたら「ひとりでに 手がうごいて」風船ガムを口の中へ放り込んでいた……って、ここはおりこうさんを思い描く場面だったので失笑。
 グローリアのキャンドルの数は2本。娘は3回、作中に登場するおたんじょうびの歌を歌ってくれた。息子はフランシスが自分の妹のように思えるみたいで、しょうがないねえ〜といった風に作品を楽しんだ。「チョムポ」というチョコレート菓子がプレゼントの中でも特別すてきに見えて、あっさりと子どもの心をつかんでしまうお誕生日絵本。わたしにすればやっぱり、幼い日を振り返るための絵本である。
 邦訳版のイラストは、パステル調のオレンジ、グリーンで描かれる。シャーベットのような淡い雰囲気が、けんかはするけどお互いを思いやるフランシス&グローリア姉妹にぴったり。(asukab)

A Birthday for Frances

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