お誕生日絵本カウントダウン#10

 10日目は、『おかあさんだいすき (岩波の子どもの本 (5))*1。この1冊には、2つのお話*2が収録されている。表題作では、主人公の男の子ダニーのお母さんがお誕生日を迎える。大好きなお母さんのために何か贈り物をしたいけれど何にすればいいのかわからないダニーは、動物たちに智恵を貸してもらう。
 自分の幼少期を想起させる絵本である。帰結はわかっているけれど、何度も聞きたくなるのがこのお話だった。めんどりは産みたてのたまご、がちょうは枕を作るための羽、やぎはチーズを作るための乳、ひつじは毛布を作るための毛、めうしは牛乳――心優しい動物たちからのプレゼント候補が、それはそれは特別に思えて仕方なかった。特にがちょうの羽を詰めた枕ってどんなものだろうと、夢にまで出てきたような気がする。
 作品解説を読むと、これは作者マジョリー・フラックが娘のヒルマに語ってあげたお話で、「せがまれては何度もくりかえすうちに、ヒルマがつけたしたものも加わって、何年かのちに本にしたときは、フラックがヒルマに聞かせた話か、ヒルマがフラックに聞かせた話か、どちらかわからないくらい、渾然とした母子共同の合作になっていた」という。知らなかった事実を知りさらに納得して、うなってしまう。身近な動物、対話の繰り返し、温かい心、ちょっぴり緊張感、Yes/Noゲーム、最高の贈り物……、どれもこれも興味と絡めて子どもを幸せな気持ちにさせる、うれしい行為の重層構造になっているもの。うちでも絵本を読む以上に、母が語ってくれたお話だった。親密な背景から生まれた作品だからこそ子どもがいっしょに入り込め、究極の対話の喜びが体験できる。小さな子どもの柔らかな心には、こういううれしい対話が心の栄養になる。

 娘の誕生日の前日は、わたしの誕生日。これを選んだ理由はすでに見破られていて、最後のページを読み終えて子どもたちからはbear hug〜。(2人いっしょなので、団子状態に。)息子からカードといっしょに「無料ハグ券」をもらう。これを見せれば、いつでもbear hugしてもらえるのだ、しかも無期限。(asukab)

おかあさんだいすき (岩波の子どもの本 (5))

おかあさんだいすき (岩波の子どもの本 (5))

*1:『四季の絵本手帖』春の9ページ(6月3日)参照

*2:2作目は、お母さんに編んでもらった帽子を大切にする、あんでるす少年のお話。