四季の絵本手帖『ジャイアント・ジャム・サンド』

The Giant Jam Sandwich (Sandpiper Book)

The Giant Jam Sandwich (Sandpiper Book)

 ある日突然、四百万匹の蜂の大群が押し寄せてきたらどうしましょう。ぶんぶん、ウォンウォン羽音を立てて、むんむん、むしむし熱い夏にやってきたら……、逃げ出すべきか、戦うべきか――村人たちは、みんなで集まり知恵を出し合いました。ピクニックでお弁当を広げたとたんに、どこからともなく群がり始める蜂たちのことを連想したのは、パン屋さんでした。蜂が一番好きな食べ物は、「イチゴのジャムだ だとすると……ジャイアント・ジャム・サンドつくって わなにしたら?」。こうして村中、とてつもなく大きな食パンを焼き、そこにイチゴジャムをぬって蜂をおびき寄せる作戦に乗り出ました。
 子どもはこの壮大な計画が大好きです。はしごを使ってパンの生地をこね、バスやトラックで生地を工場まで運び、焼きあがったパンを大きなノコギリで大木を切るようにスライスする見開きの図は、さながら大絵巻のようです。片すみには指揮を取るパン屋さんの白いエプロン姿があったりと、蜂が飛び交う中、村民たちが何をしているか細かく描かれ、子どもにも大人にも見どころがいっぱいです。
 イチゴジャムの甘い香りは蜂だけでなく、子どもも誘ってしまいます。読後のおやつのリクエストは、イチゴジャム・サンドに決まりでしょう。子どもは巨大な物、微小な物いずれにも魅了されますが、奇想天外で豪快なジャムサンド作戦は、食欲をそそる大きな発想の絵本として忘れられない印象を残します。(asukab)