不思議な力を持つ人々

 サッカーキャンプと音楽キャンプの間の2週間、息子といっしょに絵本を読む時間が結構持てている。昨夜は『天からのおくりもの―イザベルとふしぎな枝』を読む。
 イザベルは祖父母と、ぶたの「ムスメ」と暮らす女の子。ムスメは、イザベルの一番の友だちだった。昔船長だったおじいちゃんは、水脈を探し当てることができる不思議な力を持つ。Y字形の枝を両手に持ち歩いていくと枝が下を向き、止めようとしても止められない力に導かれるのだ。おじいちゃんは村でも名の通った水探しだったが、ふとしたことがきっかけで、その力が弱まってしまう。そんなある日、ムスメがいなくなる。イザベルは何とか探し出そうとする……。
 大地に応える不思議な力を持つおじいちゃん、5まで数えられるという賢いぶたのムスメ、繊細なイザベルの個性とムスメ、祖父母への思い、意地悪なベン・スティッチフィールドの存在――さまざまな要素が折り重なり、天から授かった力が描かれる。表紙を含め、おじいちゃんが海に出る風景が何か象徴のようになってしまい本題の水探しをする能力への強調を弱めてしまった感があるけれど、息子はY字棒を持って水脈、鉱脈を探し当てる人々の存在に俄然興味を抱く。科学では説明できない不思議な力を持つ人は世界中どこにでもいるということで、「今までぼきぼき折っていた」というただの棒切れが突然特別に見えてくる。イザベルの一人称の語りで進むところも、彼にとっては親しみやすかったようだ。ときには人や動物も探し出せるという人々や占い棒については、「ねえ、作者の説明のところにもっと書いてある?」と盛んに聞いてきた。歴史フィクションを得意とする作者のことだから、おじいちゃんのモデルはきっといたんだろうなあ。
 海辺の小さな村を描くアクリルのイラストは、懐かしい温かさを持ち合わせ丹精で美しい。いろんな背景が重なったことで、かえって多様な場面がぜいたくに味わえる。ムスメが愛敬いっぱいで、もちろん「ぶたが欲しいな〜」の気分に。
 イザベルの優しい心が、お話全体に安らぎを与えている絵本だった。読後はY字棒に思いを馳せて、やさしい気持ちに浸る。(asukab)  

天からのおくりもの―イザベルとふしぎな枝

天からのおくりもの―イザベルとふしぎな枝