四季の絵本手帖『あまつぶぽとり すぷらっしゅ』

あまつぶぽとり すぷらっしゅ

あまつぶぽとり すぷらっしゅ

  • 作者: アルビントゥレッセルト,レナードワイスガード,Alvin Tresselt,Leonard Weisgard,わたなべしげお
  • 出版社/メーカー: 童話館出版
  • 発売日: 1996/06/01
  • メディア: 大型本
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 表紙のにっこりしたかえると可憐なひなぎくが子どもを誘う、雨をたたえる詩の絵本です。一粒の小さな雨のしずくが、川となり大海に流れ込む自然の姿が、水の弾ける音やリズムに乗って豊かにうたわれます。抑えたトーンに包まれるイラストは黄色と赤が中心です。明るく目を引く色調ではありませんが、うっすらとした落ち着き具合が雨の日の静けさと重なり、「音」といっしょにドラマを繰り広げます。
 「ぽとり ぽっとん すぷらっしゅ」「ぽたぽた ぽっとん すぷらっしゅ」――子どもはこの「音」を耳にすると、まるで魔法にかかったかのように雨の魅力にとりつかれます。きっと、自分があまつぶ小僧にでもなった気分なのでしょう。リズムを取りながらいっしょに唱えれば、心地よさが体感できます。「ぽたぽた ぽっとん」「すぷらっしゅ!」と唱え合う快感は、何年も世代を超えて読者を魅了してきたに違いありません。普遍的な魅力が、雨のリズムに存在します。
 たった一粒の小さなあまつぶは、庭の植物にも、森の動物たちにも、そして人間にも平等に与えられる自然の賜物です。ときに大雨となり人畜に被害を及ぼす流れであっても、これは誰にも逆らえない自然の流れです。すべての人間を納得させる自然の摂理を思い描きながら、雨の日が楽しめるささやかな作品です。(asukab)