チョコレート工場の秘密は、あたたかい

 『Charlie and the Chocolate Factory (Colour Edition)』(邦訳『チョコレート工場の秘密 (ロアルド・ダールコレクション 2)』)を読む。子どもの夢が詰まったお話は、時代を越えて今夏2度目の映画になった。
 主人公チャーリー・バケットは、両親と4人の祖父母と暮らしている。家は貧しく生活は厳しいけれど、家族は温もりに満ちた日々を送っていた。チャーリーの唯一の楽しみは、1年に1度お誕生日にもらえるウォンカ製の板チョコレート。彼の街には、世界一と言われるウィリー・ウォンカのチョコレート工場があった。祖父母の話によると、スパイによってチョコレート作りのレシピを盗まれたウォンカ氏はそれ以来、工場を閉鎖。ところが働いている人は誰もいないはずなのに工場からは煙が立ち昇り、チョコレートが製造されるという不思議なことが起こっていた。そんなある日、ウォンカ氏から心躍る知らせが告げられた。金色チケット入りのウォンカ製チョコレートを5枚、工場から出荷したので、チケットを手に入れた子ども5人を工場に招待するという内容だった。このニュースを聞き、子どもたちは大さわぎ。みな、金色のチケットを手に入れようと、お菓子屋さんに詰めかけた。誕生日を迎えたチャーリーも、胸を弾ませながらチョコレートの包みを開く……。
 工場に招待される5人の子どもたち、夢のようなチョコレート工場、工場で働く人々の秘密――。息もつけないほど夢中にさせる本とはこのことだ。章を読み終えるごとに、次の章に引きつけられる。「チョコレート」というマジカルな存在を巧みに使い、夢見ないはずのない夢の世界を作り上げたダールに脱帽の作品である。けれども、大切なメッセージはしっかり伝えられる。チャーリーの家族から生まれるぬくもりは作品1番の魅力で、読後、甘いチョコレートの味わいをさらに甘くしてくれる秘密のレシピになっている。
 うちにあるのは、40周年記念版。カラーのイラストがお菓子の雰囲気にぴったり。(asukab)

Charlie and the Chocolate Factory (Colour Edition)

Charlie and the Chocolate Factory (Colour Edition)