永遠の少女に贈るお誕生日絵本

 可憐さと気品に包まれたお誕生日絵本が『アリスの不思議なお店』。……絵本というより写真コラージュ&詩画集というべきかも知れない。作者が娘のために作ったものということだが、ヨーロッパの洒脱と時間の不思議が透明感を伴なって描かれる。
 不思議なものを売る女の子アリスへのプレゼントを紹介する形で、「わたし」が持っている夢のような小物が登場する。たとえば、ピノキオの鼻の先っぽ、おやゆび姫のゆりかご(バラの花びらのシーツ&すみれのマットレス付き)、長靴をはいた猫の口ひげ2本、親指小僧の小石1つ、空飛ぶじゅうたんツアーの当たりくじ、星の王子さまの影、白雪姫の口紅とおしろい入れ……。
 フランス人の作者らしく題材には『星の王子さま (岩波少年文庫 (001))』や『海底二万里 (創元SF文庫)』も取り入れられていて、登場人物たちをすべて知っていたら、わくわく小躍りしそうな作品だ。ワルシャワ蚤の市、インドの魔術師の贈り物、イスラム隠者の骨董品、キリマンジャロの斜面……なんていうのも、ヨーロッパ風の羅列でイメージをかきたてられる。
 ガラスの小ビンから魔法を取り出すような語りは、幸せな少女アリスをすんなりと連想させてくれる。雰囲気たっぷりの訳は、さすが詩人の手にかかっただけあると感じた。ケース入りで、中央の窓から天使のイラストがのぞく。幻想的な趣向は、中学・高校生から大人向き。(asukab)

アリスの不思議なお店

アリスの不思議なお店