四季の絵本手帖『エルシー・ピドック、ゆめでなわとびをする』

エルシー・ピドック、ゆめでなわとびをする (大型絵本)

エルシー・ピドック、ゆめでなわとびをする (大型絵本)

 エルシー・ピドックは、生まれながらのなわとびの名手です。7歳になった頃、評判を聞きつけた妖精たちは三日月の夜、ケーバーン山にエルシーを招きなわとびの秘術を手ほどきしました。歳月は流れ、ケーバーン山に工場建設の話が持ち上がります。村人の反対を押し切って領主が建設着工に踏み切ろうとする際に、年老いたエルシーが現れました。
 エルシーの見せるなわとびの秘術は、かみわざでした。109歳という高齢にもかかわらず「高とび、おそとび、するりとび、つま先とび、長とび、早とび、強とび」と、魔法がかった跳び方で領主を翻弄し、着工遅延を図るエルシーの姿に子どもは驚嘆の声を上げます。その昔、眠ったまま妖精たちとなわとびをしたように疲れることもなく、一晩中、軽やかに跳び続けたのですから、山を守ろうとするエルシーの信念に畏敬の念さえ抱くことでしょう。
 妖精という神秘の存在となわとび遊びの楽しさも合わせて描かれるファンタジーは、薄い緑色を基調とした柔らかい水彩ペン画とほどよく調和し、包み込むように子どもをケーバーン山に誘います。作品全体にさわやかな活力を与える英国のなわとび遊び歌「アンディー、スパンディ、さとうのキャンディ……」を口ずさみながら、今もまだ跳び続けているというエルシーに思いをはせるのです。(asukab)