四季の絵本手帖『ウェズレーの国』

ウエズレーの国

ウエズレーの国

 自分だけの国を持てたら、どんなにすてきでしょう。学校で仲間はずれにされていたウエズレーは、夏休みの自由研究に「自分だけの文明」を作り出す壮大な計画を思いつきました。
 まず、自分だけの作物を育て、採れた実からジュースを絞ります。次に茎から取った繊維で帽子を編み、軽くて柔らかい洋服を作りました。種から取れる油は最高の日焼け防止・防虫液です。興味を示してやってきた元いじめっ子たちにそれを売ってあげ、日時計を作り、新しいゲームを考え近所の子たちにも教えてあげて……と、ウエズレー国では何でも手作りでした。熱帯夜は茎で作った笛を吹きながら、枝を組んだ涼み台の上で過ごしました。
 子どもは、次から次へとウエズレーがいろいろな物を作り出す光景に心から魅せられることでしょう。1本の植物から始まったウエズレーの国を自分も実現できたら、と誰もがイマジネーションを膨らませずにはいられません。同時にイマジネーションだから最後には消えてしまうのではという思いもあるのかもしれませんが、ウェズレーの国に終わりはありませんでした。自然に根ざした物作りから始まった自分の国で、ウエズレーは最後に最高の収穫を得るのです。
 豊かに国が発展していく光景は、茂る草木、芳しい果実の香りとともに自由で開放的な夏の空気を送り込んでくれます。ウエズレーの国は、子どもの心に人生で最高の種まきをしてくれることでしょう。(asukab)