ボストン・レッドソックスのベースボール絵本

 マリナーズの調子がいまひとつなので、注目するのは他チームである。個人的に昨年の覇者Boソックスは常に気になるところ。NYに次いでの金満チームだが、優等生のNYに対して各自個性丸出しのBoソックスには他にはない魅力を感じる。
 歴史のあるチームや選手のエピソードは、絵本にもよく描かれる。(「野球」と「ベースボール」は異なるので後者を用いるが)ベースボール関連の絵本は、とにかく多い。NBANFLに比べ、MLBが別格なことは歴史が物語る。社会貢献のために生まれた興行であるし、家族エンタテイメントとしてのあり方はずっと変わらない。澄んだ青空のもと緑の芝生でプレーする選手たちを家族みんなで応援するのって、本当に気持ちがいいもの。Tボールから始まってリトル・リーグからメジャー・リーグまで、ベースボールの思い出は輝く夏の思い出になる。
 ベースボール絵本が多く出版される理由は、MLBが子どもに夢や希望を与え続ける存在だからだろう。『Zachary's Ball (Tavares baseball books)』は、そんな少年の純粋な憧れをストレートに描いた。Boソックス本拠地フェンウェイパークに父親と出かけたザッカリーは、憧れの選手の打ったファウルボールを手にして不思議な体験をする。気が付くと、いつの間にかユニフォームを着てマウンドに立っていた。キャッチャーのサインどおりに投げるとバッターは三振、試合終了となった。それ以来、毎晩ボールを抱えて眠りに付くと、ザッカリーはBoソックスの選手として活躍する夢を見る。
 球場でファウル・ボールを手にする、選手に握手をしてもらう、サインをもらう、声をかけてもらう……ほんの小さなことだけど、子どもにしてみれば一瞬のうちに世界が変わるような鮮烈な体験になる。MLBなんて所詮ビジネスなのだが、1つの試合で大勢の観衆に夢を与えていることもまた事実。そんなビジネスなら乗ってみようじゃないの、という気持ちになってくる。Boソックスファンでなくても野球が好きであれば誰もが共感できるシンプルな展開は、スポーツが人々を魅了する背景をさわやかに物語る。
 2000年初版の絵本だが、昨年BoソックスがWS優勝したことで今春特別版ペーパーバックが出た。表紙はザッカリーがワールド・シリーズ第7戦で最後の打者を三振に取り優勝を決めたシーン。これ以上は考えられないほどのぴったりのイラストで、まるで優勝を予言していたかのように感じた。モノトーンの鉛筆画が一瞬一瞬を味わい深く描き、このスポーツの風格を生み出している。(asukab)

  • オリジナル版

Zachary's Ball (Tavares baseball books)

Zachary's Ball (Tavares baseball books)

  • BoソックスWC記念版(ペーパーバックのみ)

Zachary's Ball Championship Edition (Tavares baseball books)

Zachary's Ball Championship Edition (Tavares baseball books)