バケーションは「ZOOM」

 『Zoom (Viking Kestrel picture books)』(日本版は『ZOOM (fukkan.com)』)のページをめくり、時間を忘れることしばし。この絵本を開くと、時空を旅する不思議な感覚が体験できる。イメージは「夏」と「米国」。熱帯夜に冷たいグラスを傾けながら堪能したかったな、この世界。出会ったのは、こちらに来てからだ。
 雄鶏、2人の小さな子ども、おもちゃ、カタログ、クルーズシップ、看板、街中、テレビ、アリゾナ、切手、ソロモン諸島、セスナ機……出てくるものはざっとこんな感じ。言葉は無く、すべてイラストで語られる。シャープな線のイラストは洗練されていて、表紙の赤、左ページの黒の中で浮き立つように迫る。
 息子がおもしろい楽しみ方を教えてくれた。後ろからページをめくるとズーム・インで、前からめくるとズーム・アウト。まさに、その通り。なぜかズーム・アウトの方がゆっくりで、ズーム・インの方が速く感じられる。作品中の街は、ニューヨークなのか、ロサンジェルスなのか意見が食い違ったけれど、いつかその街を訪れたら、突然幻想の中で飛び出す光景になるんじゃないか。
 イメージと錯覚で遊ぶ絵本には続編に『Re-Zoom (Picture Puffin Books)』がある。(asukab)

  • オリジナル

Zoom (Viking Kestrel picture books)

Zoom (Viking Kestrel picture books)

  • 続編

Re-Zoom (Picture Puffin Books)

Re-Zoom (Picture Puffin Books)