四季の絵本手帖『きょうはみんなでクマがりだ』

きょうはみんなでクマがりだ (評論社の児童図書館・絵本の部屋)

きょうはみんなでクマがりだ (評論社の児童図書館・絵本の部屋)

  • 作者: マイケルローゼン,ヘレンオクセンバリー,Michael Rosen,Helen Oxenbury,山口文生
  • 出版社/メーカー: 評論社
  • 発売日: 1997/10
  • メディア: 単行本
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 赤ちゃんの頃からいっしょのぬいぐるみやおもちゃは、子どもにとって特別な存在です。中でもクマは森の住人として数多くの絵本に登場するので、子どもにとり身近なイメージの存在かもしれません。
 親しみの対象である一方、クマは野生動物でもあります。そのクマに会いに行こうと出かけるのがこの唱え歌絵本です。読者はジェスチャーをつけ、リズムに乗り、意気さかんに、主人公一家とクマ探しに出発することになります。
 草原、川、沼地、森、吹雪の中……と、道中登場するさまざまな風景は変化に富み、困難にもかかわらず胸が躍ります。各場面から伝わる風、水、泥、森のにおい、雪など五感を刺激する格好の要素が、自然を体感する状況を生み出しているからでしょう。川や沼地、吹雪の中も果敢に進む主人公一家に思いを寄せれば、擬音・擬態語が繰り出すリズムの世界に引き込まれ、「音」と「動き」の連動が満喫できます。的確なデッサン力で描かれる彼らの表情も見逃せません。見開きの大画面に遠近を駆使して示される姿を追うだけでも、クマ狩りと称した遠出の満足感が味わえます。
 洞くつでクマに出会った後は、スリル満点の展開が待っています。コマ割りと音の繰り返しが前半と異なるテンポを効果的に表しているので、のどかな歩調から全力疾走への変化に合わせジェスチャーにもスピードを加えると気分はさらに盛り上がることでしょう。(asukab)