四季の絵本手帖『お月さまってどんなあじ』

お月さまってどんなあじ?

お月さまってどんなあじ?

 まろやかな輝きを放ちぽっかりと夜空に浮かぶ月の姿は、地上の生き物をとりこにしてきました。このお話では、そんなお月さまの「味」を確かめようと試みる動物たちの姿が描かれます。山の上から月に向かって手を伸ばす彼らの姿はほほえましく、子どもはお話ならではの設定に共感します。
 最初に山に登ったカメに始まり、ゾウ、キリン、シマウマ、ライオン……1匹ずつそれぞれの背中に乗り、段になって月を目ざす光景はさながら芸術的なオブジェです。少しずつ高くなる動物の塔を見て、「下の動物は重くないのかな」という心配とともに、「次は何か起こるのか」と子どもの好奇心は膨らむことでしょう。動物たちの表情は柔らかく、素朴な風合いのイラストと絶妙な調和を生み出します。次の動物が片すみに描かれる白地ページと夜空の黒が美しくコントラストをなす中で、子どもは静かなできごとを息をのみながら見守るのでした。
 塔が高くなるたびにひょいと上へ動いてしまうお月さまとのやりとりは、意外な展開を持って締めくくられます。ゆっくり流れる時間が、月の光に照らされ目を閉じる動物たちをやさしく包み込んでいきます。子どもの心にも、きっと安らぎがあふれていることでしょう。(asukab)