四季の絵本手帖『ジャムつきパンとフランシス』

Bread and Jam for Frances

Bread and Jam for Frances

 ささいなことにも関わらず新しいことに直面して物おじしたりおっくうになることは、小さな子どもにとりよくあるできごとなのでしょう。そのハードルを何ともなしに越えてしまうこともあれば、居心地の悪さから思い出したくない経験になることがあったりと、できごとひとつひとつにはその子どもなりの対処のしかたとタイミングがあるようです。
 アナグマのフランシスには、ジャムつきパンしか食べようとしない好き嫌いがありました。お母さんが新しいごちそうをこしらえても、結局いつも大好きなジャムつきパンしか食べようとしません。理由はジャムつきパンならよく知っていて安心だし、いつ食べても美味しいからというものでした。半熟卵が嫌いな理由は変なふうに黄身がたれたり、こぼれるから、いり卵はフォークにのせるとバラバラ下に落ちてころがるから、目玉焼きはお皿の上から変な目でじっとにらんでいるみたいだから……と、大人の視点から見ると取るに足らないことが理由となり、ほかの料理をまったく口に運ぼうとしませんでした。
 そんなフランシスをあたたかく見守り、知恵を使って料理のおいしさに気づかせてくれるのがお母さんです。フランシスが自分からジャムつきパン以外の食事を取るようになった秘密の背景には、家族いっしょに食卓を囲み会話を弾ませる毎食の習慣があったことも見逃せないでしょう。(asukab)