四季の絵本手帖『もりでいちばんつよいのは』

もりでいちばんつよいのは? (児童図書館・絵本の部屋)

もりでいちばんつよいのは? (児童図書館・絵本の部屋)

  • 作者: ジュリアドナルドソン,アクセルシェフラー,Julia Donaldson,Axel Scheffeler,久山太市
  • 出版社/メーカー: 評論社
  • 発売日: 2001/01/01
  • メディア: 大型本
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 主人公は、1匹の賢いねずみです。森の中で天敵に襲われそうになると、架空の怪物グラファロのことを話し相手を震え上がらせるのです。きば、爪、歯をはやし、オレンジ色の目、黒い舌、紫色のとげを持つ恐ろしいグラファロのことを教えてあげると、ねずみを食べようとしたきつね、ふくろう、へびは、とたんに顔色を変えて逃げ去りました。「やれやれ、たすかった。グラファロなんて いないのに」――けれども、安心したのもつかの間です。なんとねずみの目の前に、天にも地にもいるはずのない本物のグラファロが現れたのですから。話していた通りの怪物の登場に、子どもはねずみと同様びっくり仰天でしょう。奇想天外な展開は、たちまち子どもを森に招き入れます。
 ねずみの知恵、悪者3匹の翻りぶり、そして存在感たっぷりのグラファロ――親しみやすさ、ユーモア、意外性――子どもを魅了する要素の揃った展開は会話を中心にテンポよく進み、キャラクターたちの表情と合わせておもしろさをどんどん盛り上げます。原書の韻を継承した調子のいいフレーズが物語に勢いをつけ、小さなねずみと大きなグラファロのやり取りに笑いを加味していくのです。ねずみの賢明さに、子どもは大満足でしょう。
 グラファロとは何者かとストーリーを振り返りながら、架空の生き物を子どもと作り出すことも楽しい活動です。(asukab)