クイル賞ノミネート作品を読む#5 古代エジプトにようこそ〜の仕掛け絵本

 『Egyptology: Search for the Tomb of Osiris (Ologies)』(エジプト学)は、2003年発行の『Dragonology: The Complete Book of Dragons (Ologies)』(ドラゴン学)と今秋発行の『Wizardology: The Book of the Secrets of Merlin (Ologies)』(魔法学)で全3作となる豪華仕掛け絵本「学問」シリーズの第2弾。ノン・フィクション仕立ての「見て、触って、取り出して」楽しむ参加型絵本として、既刊は高学年から中学生ぐらいの子どもたちの間で人気を博している。
 第1弾はドラゴン学の特集。まず、そんな学問があったのかと驚いたが、ドラゴンにまつわる文化性を知るにはもってこいの内容だ。これは19世紀に実在したのかしないのか定かでないドラゴン学者アーネスト・ドレイクの著作とされる。出版社の情報によると、原本はロンドンで見つかった1895年版を模写したものという。世界各地のドラゴンを、地図やめくりを用いて科学的実証をする形で紹介し、おまけに(偽)ドラゴンの皮、目なども出てきて、ドラゴン好きを魅了している。
 さて、同じ趣向で編集された第2弾、エジプト版の表紙は赤い宝石入りの金ぱく仕立て。豪華な懐古趣味はアガサ・クリスティーの世界そのもので、書簡、地図、めくりなどを用いて20世紀初頭エジプト学が興隆した時期を振り返る。今回は1926年に古代エジプトの墓発掘を目的にカイロに渡ったエミリー・サンズの日記がその原本という。写真や旅で使った切符など当時の雰囲気をそのままに再現しながら、象形文字の解読、古代エジプト文化、ミイラの埋葬の仕方など、事実も織り込んで編集された。
 それにしても、この凝り方といったらない。編集者は、さぞかし楽しみながらエジプト・ワールドに浸ったことだろう。フィクションでもまるでノン・フィクションのような体裁を持ち、古代エジプトの魔力で読者を包み込むプロットが心にくい。
 第3弾魔法学の本も、ハリー・ポッターファンなど魔法の世界に浸りたい人には、よだれがでるほどおいしい内容なんだと思う。古代文明トから広まった錬金術は不老不死の万能薬を調合しようと試み、その過程で多くの化学発見をなしたというから、まじめに魔法の調合を語る本は同時に人類の歴史を学ぶ本でもあるんじゃないかと思う。(asukab)

  • クイル賞ノミネート作品

Egyptology: Search for the Tomb of Osiris (Ologies)

Egyptology: Search for the Tomb of Osiris (Ologies)

  • シリーズ1とシリーズ3

Dragonology: The Complete Book of Dragons (Ologies)

Dragonology: The Complete Book of Dragons (Ologies)

Wizardology: The Book of the Secrets of Merlin (Ologies)

Wizardology: The Book of the Secrets of Merlin (Ologies)