四季の絵本手帖『歯いしゃのチュー先生』
- 秋の25ページ 歯いしゃのチュー先生 (児童図書館・絵本の部屋)
- 作者: William Steig
- 出版社/メーカー: Farrar Straus & Giroux
- 発売日: 1982/05/01
- メディア: ハードカバー
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チュー先生はネズミなので、ネコやその他の危険な動物の治療はお断りです。ところがある日、虫歯を痛がるキツネが治療を申し入れてきました。もちろん断りましたが、泣きながら痛みにうめくキツネの姿に負け、とうとう患者として受け付けることにします。
痛みで弱っているといえども、キツネはキツネです。チュー先生が大きく開いた口に入ると、本能にくすぐられ何やらキツネの目つきが怪しくなってきました。ネズミ対キツネ、襲われる側と襲う側――自然界の構図が小さな歯科医院を舞台にくっきりと浮かび上がり、何が起こるのか子どもの心もドキドキ緊張しはじめます。チュー先生とキツネの表情を追うだけでも、ドラマのありようが理解できるでしょう。
息の匂いが伝わってきそうなキツネの口に入り込み、誇りを持って仕事に打ち込むチュー先生はプロ意識に燃えています。子どもはそんなチュー先生の姿から、はつらつとした心意気を感じているにちがいありません。(asukab)