四季の絵本手帖『ねずみのとうさんアナトール』

Anatole

Anatole

 機知に富んだねずみのアナトールが大活躍をする、チーズの香りいっぱいのお話です。パリ近郊の小さなねずみ村で一家8人幸福に暮らしていたねずみのアナトールは、ある日、チーズを頂戴しようと出かけた家で人間が極力ねずみを嫌っている事実を知りショックを受けます。友人が止めるのを振り切りなんとか人間との関係を改善したいと思ったアナトールは、あるすてきな計画を思いつきました。それは、チーズ工場の経営建て直しを影から手伝うことでした。
 チーズとねずみという切っても切れない因果関係をユーモアを絡めて描く展開は、子どもに大歓迎される設定です。フランスらしい、赤、白、青三色で描かれる張りきりアナトールの小気味いい働きぶりは、小さいけれど大きなことに挑戦するねずみらしさの表れと言えるでしょう。子どもは1匹の凛と幸せそうなねずみに、いつの間にやら熱い声援を送ることになります。
 チーズのことならまかせてという心意気で行動するアナトールの姿は、フランス人の、言い換えればねずみたちの食文化に対する誇りとも受け取れ、すがすがしさを与えます。チーズの山に囲まれ、味見評価をするページは特に見ものです。おいしそうな光景に、子どもは思わず舌鼓を打ち始めるかもしれません。
 何でも積極的に挑戦するアナトールに心から拍手を送りましょう。前向きな姿勢のアナトールから、たくさんのことが学べそうです。(asukab)