四季の絵本手帖『三びきのコブタのほんとうの話』

三びきのコブタのほんとうの話―A.ウルフ談 (大型絵本)

三びきのコブタのほんとうの話―A.ウルフ談 (大型絵本)

 有名な「三匹のコブタ」のお話には、実は誰も知らない事実が隠されていました。悪役だったオオカミが、悪者呼ばわりされることに対して新聞に異論を主張しているのです。誰もが知っているできごとをオオカミの立場から語る絵本は、無垢なコブタの兄弟と怖いオオカミというイメージを覆し、おとぼけ顔のオオカミと恐ろしいブタという逆さまのキャラクターを生み出します。
 意外な視点の転換に、子どもは新鮮なおもしろさを見出すことでしょう。オオカミがコブタたちの家を吹き飛ばした理由は、かぜをひいていてくしゃみをしただけだったというのですから。しかも、コブタたちの家を訪ねた理由は、おばあちゃんの誕生日ケーキを焼こうとして足りなくなった砂糖を分けてもらいに行ったというのですから。凶暴だったはずのオオカミは冒頭から思いやりいっぱいのオオカミとして登場し、本能をサラリとさらけ出しながらもユーモラスな裏話を聞かせてくれるのです。
 でっち上げの記事に真相をかき消されたと訴えるオオカミの言い分はジャーナリズムへの風刺と受け取ることができ、苦笑するのはむしろ大人のほうかもしれません。真相はどこにあるのか、親子で話し合うことも楽しいでしょう。
 立場を変えた主人公のお話は、創作遊びに生かすことができます。筋を変えずに有名な昔話を作り直す活動は、大人にとっても知的な刺激といえるでしょう。(asukab)