四季の絵本手帖『あたまにつまった石ころが』

• 秋の28ページ　あたまにつまった石ころが

あたまにつまった石ころが

　好きなことを仕事にして生涯を送るほど幸せなことはないでしょう。この絵本には小さな頃から「石」に夢中になり、生涯その道を究めた作者の実父の幸せな姿が描かれます。
　子どもの頃から石集めをしていた主人公は、いつもまわりの人たちから言われていました――「ポケットにも　あたまのなかにも　石ころがつまっているのさ」と。でも、何を言われても彼の石好きは止まりません。大人になってガソリン・スタンド経営に携わりながら、あるいは次に訪れた大恐慌時代の就職難に直面しても、いつでも石の収集を続けました。失業中には科学博物館に足を運び、石を飾ったガラスケースのある部屋でまる一日過ごすこともありました。そうこうするうちに、彼の上には思いもよらないすてきなチャンスが訪れたのです。
　好きなことをずっと好きでい続けられた主人公の生き方は、真の幸せを描いているといえます。石といっしょの満ち足りた表情が、何よりもその証明です。好きなことを探究していると、人間は無心により多大に救われるものなのでしょう。気持ちが安定するので、常に幸せでいられるのです。子どももきっとそうでしょう。魅せられているからこそ満たされ、気をもむことなど何もありません。
　この絵本の威力が発揮されるのは、大人になってからかもしれません。(asukab)