風を知る科学絵本

 すてきな絵本を手にした。『かぜにおされる―くうきのふしぎ (ヴィッキー・カッブかがくであそぼう)』は、米国の優れた科学絵本に贈られる2004年度ロバート・F・サイバート賞オナー作品である。だからもともと原書でもトップクラスの絵本なんだろうと思いページを開いたけれど、分かりやすい邦訳がすばらしくて、うん、うんと頷きながら空気の不思議についてすんなり学ぶことができた。
 ちょうど昨日、娘から風船の中の空気について質問されたばかりだった。ヘリウム風船だったから宙に浮いていたのだが、「軽い空気」「重い空気」のことを聞かれ、「え? 空気って重さがあるのかな」と、科学の苦手だったわたしは非科学的な頭をあっちにひねり、こっちにひねり「ダディに聞いてね」と逃げていた。でも、この絵本を開き、空気にも重さがあることを知る。「へえ〜」――。しかも、明るいイラストと文字の大きさや角度を変えて遊ばせた視覚のおもしろさが、それを証明する簡単な実験にさらに誘うのだ。身のまわりのことを題材に分かりやすく自然現象を説明する手法は、米国のハンズ・オン教育には欠かせない。この絵本はそれこそ身近な材料を用いて、その典型的な試みを紹介している。
 娘はとても喜んだ。さっそく分子(molecules)を見てみたいと意気込んでいた。米国で科学絵本といえば、マジック・スクールバス・シリーズを始め、たくさんあるけれど、この絵本(シリーズ)には、「分かりやすい、親しみやすい、楽しい」が今風に味付けされている。「風」や「空気」などの簡単な主要言葉には漢字を使用して振りがなを振ってもいいかなと思ったけれど、何だかひらがなの優しさがこの絵本には似合っているような気もした。
 1人の女の子がいろいろ遊びのような実験を試みるのだが、この黒いブーツを履いた彼女の服装が洗練された中流階級の雰囲気を出していてヤッピーに受けそうな感じ。お洒落に科学する、みたいな印象が残る。(asukab)

かぜにおされる―くうきのふしぎ (ヴィッキー・カッブかがくであそぼう)

かぜにおされる―くうきのふしぎ (ヴィッキー・カッブかがくであそぼう)