かわいいブタちゃんシリーズがやってきた!『Mercy Watson to the Rescue』

 ラップトップがウィルス感染したため、悶々とする日が続いた。コンピュータ・ショップでフォーマットしてもらったところ、フォルダー名が日本語だった文書はすべて消失。メール・プログラムなど保存をお願いしておいたにもかかわらず、日本語はフォローできなかったみたい。というより、ここは自分でメモリー・チップに保存しておくべき作業だった。今回学んだことは、フォルダー名が英語だと中身が日本語でもしっかり残ること。ということで、アウトルックを始め、タイトルはすべて英語に変更した。いくつか書き溜めていた絵本レビューが消えてしまったことを考えると、はてなダイアリーに記録しておいたレビューは幸せものだと思えて仕方ない。さてと、これから空白期間を埋めなければ。 
 この4日間、マシーンがなかったので絵本をたっぷり楽しんだ。注文しておいた本がアマゾンから届き、落ち込むはずの気持ちも絵本を手に取ればウキウキだったし。特に首を長くして待っていたのがケイト・ディカミロの最新作『Mercy Watson to the Rescue』。ディカミロ初のやさしい読み物シリーズということで、各書評が取り上げていた。わたしはアマゾンで書影を見て、即注文。明るい色とブタの笑顔を見ただけで、「絶対手に入れなくちゃ!」の直感が働いた。動物好きの息子は、「ぶた、ねずみ、犬、はりねずみ」の絵本に弱い。このイラストなら息子の好みだし、娘のリーディングにもぴったり!……読みは、どんぴしゃりだった。全12章から成るチャプター・ブックにもかかわらず、イラストは全ページフルカラー。だから、まるで小さな絵本のように、視覚的に威勢がいい。
 主人公は、ワトソン夫妻と暮らすマーシーという名のブタ。マーシーはまるで人間の子どものように、毎晩子守唄を聞きながら眠りについていた。うん、この設定に子どもはまずぐぐっとくる。ベッドに横たわり、カバーからのぞかせる丸々太ったブタちゃんスマイルの幸せそうなこと。こういう幸福感は、子どもの本には必須である。ついでにこの幸福感には、マーシーの大好物、バターのたっぷり塗られたトーストも絡められ、あたたかいベッドでぬくぬくするのは、ほっかほかのバター付きトーストを食べた気持ちのよう……とたとえられている。
 でもある夜のこと。子守唄を聴き終わり、真っ暗な部屋で1人ぼっちになると、マーシーはトーストのようなぬくもりなどまったく感じることができず、逆に怖くなってしまう。そうそう、ここも子どもの共感を呼ぶところ。そして、ついにワトソン夫妻のベッドにもぐりこむことに……。
 展開は実に単純で、一種のホームコメディ風に仕上げられた。登場人物のキャラクターがワトソン夫妻、マーシーをはじめ、隣に住むリンカーン老姉妹など魅力的で、表情・しぐさを眺めれば笑いもこぼれてしまう。要するに子どもの本って、難しいことや変わったことをしなくても、ちょっとしたことに温もりが加味されていれば十分に楽しめるものなのだと実感した。息子は、案の定、絵がいいと言っていた。バターのたっぷり塗られたあったかいトーストでお話全体を包む志向は、『The Tale of Despereaux: Being the Story of a Mouse, a Princess, Some Soup, and a Spool of Thread』(邦訳『ねずみの騎士デスペローの物語』)であたたかいスープを同様に使用した手法に通じている。読後は、やっぱり、食べ物のにおいと温もりでいっぱいだった。
 巻末にはシリーズ2の第1章冒頭が記されていて、2作目の騒動をイメージしてしまうほど愉快な思いが駆け巡った。さすが、ディカミロさん!(asukab)

  • 愛敬たっぷりの最新作

Mercy Watson to the Rescue

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  • ねずみの騎士が活躍する作者の代表作

ねずみの騎士デスペローの物語

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