四季の絵本手帖『ミトン』

ミトン

ミトン

 アーニャは犬を飼いたくて仕方がありません。友だちエレーナから子犬をもらって家に戻ると、ママから大反対され返してくるようにと叱られました。子犬を返しに行き、アーニャはまた一人ぼっちです。目から流れ落ちた涙を赤い手袋でそっとふき、アーニャは手袋を犬に見立てて遊びはじめました。すると、不思議なことが起こります。手袋が本物の子犬ミトンになったのです。
 子犬と赤い手袋を巡り繰り広げられる、心あたたまる冬のファンタジーです。純粋でいじらしいアーニャと小さな体をいっぱいに使い走り回る子犬のミトンに、子どもは素直に引き込まれていくでしょう。2人の愛くるしさは作品全体を包む温もりとなり、心に溶け込んでいきます。
 真っ白な雪を背景に映し出されるイマジネーションは、切なさと喜びを同時に表しているといえます。ひたむきな気持ちが哀しさからうれしさに変わる結末に、子どもはほっと胸をなで下ろすことでしょう。小さな女の子の夢が描かれた絵本は、作り手の優しさが伝わる美しい物語となって冬のできごとを祝福します。
 赤い小さなミトンのイメージから思わず毛糸を取り出して、編み物をしたい衝動に駆られるかもしれません。(asukab)