四季の絵本手帖『おひさまパン』

おひさまパン

おひさまパン

 雪交じりの風が吹きすさぶ季節、家の中では動物たちが怒っていたり、泣いていたり、病気で寝込んでいたり……と幸せそうではありません。みんな、おひさまが再び笑顔をのぞかせてくれるのを心待ちにしていました。そこで犬のパン屋さんは、小麦粉、バター、お砂糖、卵、イーストを混ぜて、おひさまパンを焼こうと張り切ります。「おひさまあじの とくべつパンを やきましょう」――。その生地はつやつやで、さわるとすべすべしています。このあたりから子どもは、ふかふかおひさまパンのとりこになっていくでしょう。金色の生地が、おひさまの顔になり、オーブンの中でふっくらと焼き上がるページには、甘い芳ばしい香りとパンの温もりという幸せがいっしょに描かれます。おひさまパンを一口かじれば、みんな元気がいっぱいです。「食」の与える精力は、動物たちだけでなく子どもにもしっかりと伝わることでしょう。
 布や包装紙、千代紙を利用したコラージュと水彩は、おひさまパンと動物たちのみなぎる力を鮮やかに映し出します。細部に凝った動物の表情、街や森の様子には、探しものをする楽しみが生まれるでしょう。
 子どもなら、誰もが食べてみたいと思うおひさまパン――。裏表紙には焼き方の手順が掲載されているので、特に秋から冬、春にかけてのパン作りには欠かせない絵本になりそうです。(asukab)