四季の絵本手帖『アンジェリーナのクリスマス』

アンジェリーナの クリスマス (講談社の翻訳絵本)

アンジェリーナの クリスマス (講談社の翻訳絵本)

 クリスマスは楽しく家族や友だちと過ごすもの――。そう思っていたねずみのアンジェリーナは、クリスマスの準備など何もせず、ひとりで寂しそうにしているおじいさんを見かけます。おじいさんの名前はベルさんといい、昔は村の郵便屋さんをしていました。アンジェリーナはお母さん、いとこのヘンリーといっしょにクリスマスのクッキーを焼き、ベルさんにプレゼントすることにしました。
 学校や家で華やかなクリスマスの飾りつけをして心を踊らせる中、自分とは異なる存在のおじさんを見て心が動いたこと――こういった体験は、子どもの日常にも実際あることでしょう。アンジェリーナたちは自家製のクッキーと森から切り出したクリスマスツリーを届け、ベルさんに大歓迎されました。郵便屋さん時代のことや、クリスマスのにはサンタクロースにもなったことなど、ベルさんは嬉しそうに昔のことを話してくれます。そこでアンジェリーナは、またまたすてきなことを思いつきました。
 コミュニティーの中で助け合う生活感は、子ども時代に十分に味わいたい感性です。子どもと老人の交流は、いつの時代にも温もりを与えてくれるもの。アンジェリーナは絵本の中で、寂しい人への小さな思いやりを示してくれました。この思いやりは子どもにも伝わり、読後はクリスマスの温かさに包み込まれます。(asukab)