子ども心をくすぐる秋の絵本の決定版『Leaf Man』

 秋の深さがたっぷり味わえる絵本に『あかいはっぱきいろいはっぱ (かがくのほん)*1がある。女の子が育てる砂糖かえでの1年を美しいコラージュで描く仕掛け絵本は、まるで魔法がかっている。ページを開くだけ、表紙を目にするだけで、しんと体に染み入る砂糖かえでの甘い香りが体感できるのである。
 そして、そして、この夏、夢のような絵本を見つけてしまった。この砂糖かえでの絵本の姉妹編『Leaf Man (Ala Notable Children's Books. Younger Readers (Awards))』である。日本語だったらさながら「葉っぱおじさん」だろうか。それとも「リーフマン」のままがいいのかな。作者のエイラトさんは前作製作の際、拾ったさくさんの葉っぱをカラーコピーして残しておき、またいつか葉っぱの絵本を作ろうと思っていたそうだ。それがこの渋い表紙のリーフマンになった。見開きにはさまざまな葉っぱの名称、ジャケットのフラップには拾った地名が記されているから、これは思い出いっぱいの絵本になるんだろう。仕掛けを施した視覚デザインは今回もさえわたる。
 風に吹かれてリーフマンがどこかに行ってしまった。誰か、知らない? 彼を追う間に出会うリスやにわとり、あひる、七面鳥ら動物の姿、収穫期を迎えるかぼちゃ畑や果実園の風景は、みなリーフマンのように葉っぱで描かれている。もしかして、リーフマンはこの中に隠れているの? リーフマンは風とともに、東へ西へ、南へ北へ。ページをめくるたび、切り込みの入れられた絵本上部の丘や林の輪郭が風景を変えながら目を楽しませてくれ、こちらも葉っぱ同様に風情がたっぷりである。風とともに旅をするリーフマンの姿は冒頭と最後にしか登場しないので、子どもはさらに日常でもリーフマンを意識するだろう。娘はさっそく登校のとき「あ、リーフマン!」と叫んで色づいたかえでの葉を拾っていた。そんな心にくい演出にも、作者の本領が発揮される。今年の秋は、わたしもこんな風に葉っぱ集めをしてみようか。毎年拾った葉が変色して残念に思っていたけれど、カラーコピーとはいかすアイデアだ。
 リーフマンを目にすると、子どもの頃、秋の葉っぱコラージュに夢中になった思い出がよみがえる。大小さまざまな形、いろいろな色の葉っぱで画用紙に具象を描く時間は、充実感にあふれていた。まず、目の覚めるような色を見ているだけで、色彩感覚が刺激される。色と形を眺め、においを確かめ、かさかさ言う音を楽しみ、触ってデザインを考えて、葉っぱアートはわたしの五感を存分に満たしてくれた。リーフマンも然り。子どもといっしょに、また葉っぱアートに取り組んでみよう。(asukab)

  • 砂糖かえでの甘さがいっぱい

あかいはっぱきいろいはっぱ (かがくのほん)

あかいはっぱきいろいはっぱ (かがくのほん)

  • 旅する葉っぱがいっぱい

Leaf Man (Ala Notable Children's Books. Younger Readers (Awards))

Leaf Man (Ala Notable Children's Books. Younger Readers (Awards))

*1:みんなの1年6月10日