「3匹のこぶた」レッカー車版

 新聞・雑誌で目にしていたタイトルが『The Three Little Rigs』。これは、レッカー車版「3匹のこぶた」である。舞台はコンクリートの建物に囲まれた工業地帯。倉庫や工場が立ち並ぶ中、載貨車、クレーン車など働く車たちが汗を流している。主人公の3台のレッカー車は、それぞれ倉庫を建てる。1台目のレッカー車青くんは木材で倉庫を建てた。そこにいじわるな顔をした鉄球どんが「中に入れてくれ」と言い寄ってくる。青くんが断ると、怒った鉄球どんは木造倉庫をこっぱみじんに壊してしまう。2台目のレッカー車黄色くんは石材で倉庫を建て、これも鉄球どんに壊される。3台目のレッカー車赤くんは鋼鉄材で倉庫を建て……。
 無機質な工場敷地内でおなじみのおとぎ話が繰り広げられると、空想よりもリアルなイメージが先立ってしまい妙な気持ちになった。実際、建物解体用の鉄球が倉庫を一撃する場面など、狼が「ぶ〜、ふ〜、う〜」と吹くような愉快さはなく怖さが感じられたりして。破壊のエネルギーのすごさに圧倒され、少々後ずさりしてしまったというのが正直なところだ。車たちはみな擬人化されて可愛いのだけど。
 作者は、「Toy Story」や「A Bug's Life」などアニメーション制作に携わるアーティストである。車好きの子どもたちにぴったりだろうなあ〜と、最初はコンセプトに感心したのだが、小さな子どもに見せる場面としては疑問が残った。アニメ的な背景描写が、戦争のような暗い「破壊」のイメージを生み出しているのか。たとえばサラエボバグダッドに住む子どもたちに、この絵本は読めないな。実際に戦禍を体験している人にも受け付けられないんじゃないか。そんなこといったら、映画もコミックもみんなそうだけど。丁寧に塗りこまれたキャラクターたちには好感が持てるから、気にならない人もいるだろう。ただのパロディだよ、と笑って過ごすべきなのかもしれない。というわけで娘には読まず、わたしだけの評価になった。(asukab)

The Three Little Rigs

The Three Little Rigs